氷炎 雷光風の区画 - 最新エントリ |
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2016/01/12
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (11:55 pm)
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いつもの2次創作な番外編。 本番外編では、珠緒の料理について意図的に漢字表記「臨死体験料理」を当てている。 ゲーム本編では「アルティメット」または「あるてぃめっと」で表記されているので念の為。 なお全角40字/行で表示すると、こちらの意図した折り返しになる。 あらすじ ユリナとミリィ、天音・マリエル達が学園(キャメロット)に残って、少し月日が経った。 ユニタリー・フォームを身に付けたアキトと互角に闘う人物は思いもよらぬ者だった。 序 決闘(フェーダ)と騎士 中世の儀式決闘(フェーデ)に端を発する、決闘競技(フェーダ)。 今は競技の部分を省略し単に決闘(フェーダ)と呼ばれる。世界中で人気を博し、決闘(フェーダ)を行う者達は騎士と呼ばれる。 騎士はあるものを必ず身に付けている。それはライブスフィア。腕時計的な情報端末兼勝敗判定装置のライブスフィアにより、勝敗の判定が行われる。 ライブスフィアは装着者の勝敗判定の為の機能として、相手の攻撃力と装着者の体力を数値化し、相手の攻撃を受けてどのくらい体力が減ったのかを計測するようになっている。相手の攻撃を受けて自分の体力値がなくなるか、一定時間経過後に体力値の多い方が勝つのが基本である。決闘(フェーダ)によっては、体力ではなく別に勝利条件が設定される場合もあり、その場合は当然勝利条件を満たした方が勝つ。 養成所に通う騎士訓練生達は、養成所のある町以外の場所ではライブスフィアを身に付けることができない。 なお、武器と決闘(フェーダ)における服装の騎士征装に微量のミスリニウムを使い、見えない鞘(インビジブルワーク)と触れえない鎧(リベルコート)という目に見えない武器と鎧の斥力が発せられることで、武器が相手に直接が当たることはない安全性に配慮したスポーツ的なものになっているのが、現在の決闘(フェーダ)である。 太平洋上に浮かぶ島、ログレス島。そのログレスにある王国、アルビオン。 アルビオン王立騎士養成学園は、世界中の騎士養成機関の中でもトップクラスの存在である。 その学園(キャメロット)にて開かれる4年に1度の大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)。つい先日の大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)では、近衛アキトの所属する騎士団(ユニオン)であるリディアル・エレアノルトが優勝を果たしたのであった。 優勝した者達に叶えられる願いで、アルビオン王に卒業までの学園在籍許可を取り付けた、リディアル・エレアノルトのリーダーである、ユリナことユリフィーナ・ソル・エレアノルト、ユリナの妹でミリィことミルフィーナ・ソル・エレアノルト。リディアル・エレアノルトに属し、ユリナとミリィを警護する刀條天音、ユリナの友人であるレミリアことレミリエーラ・レティアハート達と共に学園生活が続く。 起 臨死体験料理(アルティメット)の真実 学園(キャメロット)の生徒、蕨 珠緒の作る料理を知る者は、その料理を臨死体験料理(アルティメット)と呼ぶ。「お花畑が見えた」「死んだ家族に会った」「三途の川を渡るところだった」等々の評価が出てくるからである。 しかし、料理ではなく菓子を作るのであれば、臨死体験料理(アルティメット)になることはない。珠緒自身も不思議に思っている。だが、なぜそうなのかは分からない。 その答えを知ることが、騎士としての珠緒に大きな強さをもたらすことになるとは珠緒は思いもしなかった。 ある日の昼前。 学園(キャメロット)の入口に1人の騎士がやってきた。騎士の名はYU奏。アキトがユニタリー・フォームを体得したという話を聞きつけたからである。 しかし、到着した時間が悪かった。朝は軽くしか食べておらず、かなりの空腹。学園(キャメロット)の食堂を使おうにも・・・今いる場所からは遠すぎる。 そこへ珠緒が通りかかり、声をかけた。誰が見ても空腹と分かる状態だったのだ。 「あの、もしよければ私の作ったお弁当、どうですか?」 「ありがとう。私で良ければ食べさせてもらう」 「はい、それでは少し移動しましょう。ここでお弁当を食べるわけにはいきませんから」 珠緒はYU奏を連れて、2人で弁当を食べられる場所へ移動した。 移動先は学園の庭だが、何本かの木が固まって少し広い木陰を作りだしている場所である。 弁当を出し、包みを解く珠緒。 「どうぞ」 「ありがとう。ところで、どうして2人分あるのか聞いても?」 YU奏に対し、照れ笑いと苦笑いが混じった微妙な笑顔、いや少しひきつった顔と言った方が良いかもしれない。そんな顔を珠緒は見せる。 「克服する為、と・・・」 言葉の続きがあることを匂わせるニュアンスで、それ以上のことは答えない珠緒。 「言わないことの方は、何となく察しがついた。でも、『克服』とは?」 「お弁当を見れば、わかります」 珠緒の言葉に、弁当のふたを開けて、中を見るYU奏。 「黒焦げばかりだから?」 「そうなんですけど・・・それだけではないんです。私の料理は。私の料理のことを知る人たちは私の料理とその評価を合わせて、『臨死体験料理(アルティメット)』と呼びます」 「臨死体験料理(アルティメット)とはまた」 「食べれば、わかります」 「空腹は最上の調味料。この弁当が臨死体験料理(アルティメット)ではなく、普通に食べられるだろう。では頂くとしよう」 珠緒の作った弁当を食べ、完食するYU奏。 途中、臨死体験料理(アルティメット)を見て、食を止めることが何度かあった。味わっているだけではなく、何かを確かめているかのようでもあった。 「ごちそう様。さて、臨死体験料理(アルティメット)について、私が思ったことを言おう」 学園(キャメロット)の臨死体験料理(アルティメット)を知る者達とは違うことを言いそうな予感。それが珠緒を満たしていた。 「臨死体験料理(アルティメット)と言われているが・・・珠緒の料理が失敗するのは、おそらくバックドラフトとして具現化されるはずの潜在力が、調理の際に加わっているからだろう」 「えぇっ!?」 「普通なら、こんなことは考えにくい。以前、料理に関して何かなかったか?」 「うーん、全く・・・」 「では、先へ進むとしよう。料理ではなく、決闘(フェーダ)の時に、バックドラフトとして潜在能力を解放できるようにすることも可能性がある」 「それって、私が色つきになれるってことですよね?」 色つき・・・それはバックドラフトを扱える騎士を指す呼称であり、騎士として一定以上の実力の到達したことを示すものでもある。他にも黒騎士ともいわれるが、少なくとも学園(キャメロット)においては、「色つき」と言われるのが普通である。 逆にバックドラフトを扱えない騎士は白騎士と呼称される。 ちなみに、バックドラフトとは剣気や闘気とも言われるもので、発現者の騎士により色が違う。ほとんどの場合、自らの武器を中心にバックドラフトが現れる。 その騎士達の使う武器に使われるミスリニウム鉱石。バックドラフトが一定以上加わると、特定の色の光を発するという特徴がある。なぜそのようなことが起きるのかは科学的には解明されていないが、そういうものとして決闘(フェーダ)には浸透している。 「そういうことだ」 「色つき・・・なりたいです!」色つき、の部分ではややうつむいているように思えたが、なりたいです!の部分ではYU奏にはっきり向かい合って意思表示する。 「この時期、大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)が終わってから大して経っていないから、バックドラフトを扱える方が今後にはいいだろう。君の次の休みの日に、臨死体験料理(アルティメット)の原因を探りたい。どうだろう?」 「はい、お願いします!!!あ、まだ私の名前を言ってなかったですね。私は珠緒。蕨 珠緒です」 「これは失礼した。私も名乗っていなかった。私はYU奏。日本人にはわりと普通の名前だが、意図的に名前表記を変えている」 「学園(キャメロット)にはいろんな人がいますから。YU奏さんの名前表記のことを気にする人はいないと思います」 了解したという意味で、珠緒の言った言葉をスルーして違う話を振るYU奏。 「珠緒、弁当をありがとう。私がここに来たのは、近衛アキトが目的だ」 「アキト君ですか?今は、騎士団(ユニオン)のみんなで修練していると思います」 「修練中、か・・・修練中だとどこにいるか分からないこともあるな・・・騎士団(ユニオン)の本拠地で待つのが確実か?」 「夕方までは修練ですよ、多分。アキト君を探しつつ学園(キャメロット)にいる騎士を見て回るのはどうでしょう?」 「目的の近衛アキト以外にも、デュラクディールのシルヴェリア・レオディール。それに柳生騎士団の柳生重兵衛。他にも見ておくべき騎士はいる。珠緒、案内してほしい」 こうして夕方までの間、珠緒とYU奏はアキト君を探しつつ学園(キャメロット)にいる騎士を見て回り、仲良くなった。 「そろそろ修練が終わっても良さそうな時間だな」 「では、ユリナ姫の屋敷へ行きましょう。きっと戻ってきていますよ。もしまだ戻ってなくても、ちょっと待てばアキト君に会えるはずです」 「ありがとう、珠緒」 「今、アキト君に連絡してみますね」 その時、珠緒に声をかけた者がいた。 「おーい、蕨ー!」 「ロウ君〜」 アクセル・ロウ。柳生士団の1人であり、アキトの親友でもある。 声をかけた後、珠緒とYU奏の元にやって来た。 「ロウ君、こちらはYU奏さん。アキト君に用があるっていうから、今からユリナ姫の屋敷へ行こうって思ってたところなの」 「アキト達ならさっき見かけたぜ。騎士団(ユニオン)勢揃いでこの先にいた。目立ちまくって、囲まれてる状況だったからな。今行けばゆうゆう捕まえられるぜ」 飄々とそう言っているが、表に出さないようYU奏の強さや性格を判断している。 「ロウ君、ありがと。この先に行ってみるね」 「おう、気をつけろよ」 珠緒たちを見送った後、ロウは呟いた。 「YU奏か・・・あいつ何者だ?相当強いのは間違いないが・・・」 そして、ロウはYU奏のことを調べたのだった。 ロウの言葉通り、アキトの所属騎士団(ユニオン)であるリディアル・エレアノルトの面々は完全に囲まれていた。ちょっとやそっとでは近づくこともままならないのは明らかだ。 「珠緒、ついてきてくれるか?」 「・・・?」 YU奏の意図が分からず、困惑しながらもついていく返事の頷きだけする珠緒。 先をYU奏が歩き、後ろに珠緒でアキト達に近づいていく。 「近衛アキト!」 人垣から離れた場所でのYU奏の呼びかけ。その雰囲気に囲んでいた者達は動きを止め、静かになった。 「すまない、俺の名前を呼んだ人のところへ行きたいんだ。道を開けてほしい」 アキトの言葉で囲みが割れて、通り道ができた。YU奏の元へアキトがやって来る。 「俺の名前を呼んだのは?」アキトはそう言った。 「ユニタリー・フォームの体得者、近衛アキトに会いに来た」 「・・・」 決闘(フェーダ)の場ではないのに、それ以上の緊張を感じるアキト。 「なるほど、近衛シュンエイの息子というだけある。それに随分と修練を積んでいるのもな」 YU奏はアキトを見て、思ったことを口にした。 「珠緒と一緒、ということは珠緒の友人か?」 「その人はYU奏さん。今日の昼に初めて会ったんだけど、今は友達だよ」 「直接闘うつもりで来たのだが・・・ここで、というわけには行かない。改めて日取りを決めて決闘(フェーダ)をしたい」 「ああ、分かった」 「都合のいい日時があれば、ライブスフィアに連絡してくれ」 その言葉と共に、アキトとYU奏、互いのライブスフィアに相手の情報が登録された。 「アキト君、またね」 珠緒とYU奏が視界から消えてから、アキトはようやく緊張が解けた。 冷や汗では済まない、もっと本能の奥底で感じる強さがYU奏にはある。 「YU奏、か・・・」 ボソッと呟くアキト。天音がそんなアキトに声をかける。 「アキト、YU奏は相当強いぞ。私も冷や汗をかいた」 「なんですって!それほどの者のなの?」 天音の言葉にレミリアが驚く。 「お兄様、どうされるおつもりですか?」 「あの言葉、いつでも相手できる自信がある、ということね」 ユリナの妹ミリィ、ユリナもアキトにそう言った。 「明日、闘う」 「分かったわ」ユリナの言葉の後、リディアル・エレアノルトの面々は言葉を交わすことなく、帰宅した。 屋敷の修練場。夕食を済ませてからの少しの時間だが、アキトはイメージトレーニングと修練をしている。 「YU奏、かなり強いな。ユニタリー・フォームを使えればいいが」 そこにアキトへ声をかける人物が。 「アキトさん」 「マリエルさん」 「この時間に修練ですか?」 「明日の決闘(フェーダ)に備えて」 「後30分以内に、切り上げてくださいね。今のアキトさんの状態からすると、それが限度です」 言っていることは気遣いそのものだが、言葉に込められた雰囲気やニュアンスは命令。それも厳格な命令だ。 「うーん、マリエルさんに言われるとなると、もう無理だな」 夕方のことを聞いたマリエルはあえてYU奏のことを言わずにいた。そんなことは知らずにアキトはライブスフィアでYU奏に明日の決闘(フェーダ)に関する情報を送った。 承 珠緒とYU奏 翌日。アキトの決闘(フェーダ)は非公式(アンオフィシャル)の扱いと決まった。 指定された時間と場所へアキト、YU奏。双方が現れた。アキトは一人だが、YU奏は珠緒を連れてきている。 ライブスフィアからの音声で、決闘(フェーダ)の前の剣誓省略と試合開始が告げられる。 「決闘(フェーダ)、開戦!」アキトとYU奏の声が重なり、正式に始まった。 YU奏の武器は見えない。対してアキトは、大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)の途中から使っている、修練の剣である己を磨く黒き翼(ソラスティア・ノイエ)で変わらない。 「武器はどうしたんだ?」 「気にしなくていい。『拳』がこの決闘(フェーダ)での剣だからな」 YU奏の拳というより左右それぞれの手の指に1つずつ、指輪がはめられている。 実はこの指輪にはミスリニウムが含まれているのだ。 YU奏は、バックドラフトをかなり強く発現した。バックドラフトが全身に広がる寸前くらいに発現している。円卓騎士章(インシグマ)に近いバックドラフトだ。 バックドラフトは武器を中心として特定の色の光が発現するが、円卓騎士章(インシグマ)は、触れえざる鎧(リベルコート)も含めて光が全身を覆う。いわば、バックドラフトの上位とも言えるものだが、そこまで到達できる騎士は本当に極僅かである。 アルビオンにおいては、国を代表する12の騎士団(ユニオン)の代表者に円卓騎士章(インシグマ)が授与される。円卓の騎士になぞらえているのが由来だ。 YU奏のバックドラフトを見て、自分のバックドラフトのギアを最初からトップで行くことを決めるアキト。幾度となく攻防が繰り返され、間合いを取る。 剣を使っている分、アキトの方が間合いとしては有利なはずなのだが全くそれを感じられない。 それ程、YU奏は両の拳による攻撃、防御と受け流しがうまく行っている。 アキトのライブスフィアが残り体力値は50%と告げる。 「ユニタリー・フォームとて、万能ではない。その証明の1つがこれだ。お前の力を見せろ!」 「うぉおおお!」 アキトの渾身の一撃に、YU奏はバックドラフトを集中した拳を打ち込む。拳と剣。それぞれの見えない鞘(インビジブルワーク)が発する斥力によって、直接的に拳と剣が交わることはない。弾かれた後の次の一撃が勝敗を決した。 剣を構え直さなくてはならないアキトは、YU奏の拳撃への対応が間に合わない。 それだけではない。バックドラフトどころか、間違いなく円卓騎士章(インシグマ)の力が拳に集中していた。学園最強の5人に数えられる、シルヴェリアとアーシェ姫のバックドラフトと円卓騎士章(インシグマ)の力を体感したのだから間違えようもない。 ライブスフィアがアキトの残り体力値0%を宣言し、YU奏の勝利が確定する。 「この程度の芸当で・・・シュンエイの息子だからと過大評価したか?」 「こんなことができるとは。やっぱ奥が深いな、決闘(フェーダ)は」 「前向きだな、近衛アキト。さすがにシュンエイの息子だけある」 珠緒を見てから、アキトへ言葉を続けるYU奏。 「ユニタリー・フォーム破りの1つが拳で闘うということだとさっき、私は見せた。他にも破る方法がある。そして、その方法を体現できるであろう人物を見つけた。もしその人物との決闘(フェーダ)に勝てたなら、私の所属騎士団(ユニオン)”アーサー”の所属候補として認めても構わない。必要とあらば、誓約(ゲッシュ)にしてもいい」 「で、その人物というのは?まさか珠緒?」 「察しがいいな。そう、珠緒だ。今のままではお前と相対するどころではないが、強くなれるだろう」 「えぇーーーーーーーっ!?私がアキト君のユニタリー・フォームを破れる可能性があるって・・・」 「珠緒は強くなれるはず。珠緒なら今後近衛アキトに対抗できる、いや近衛アキトを倒せる可能性すらある。そして、1つ頼みたいことがある。珠緒のことはまだ誰にも言わないでほしい」 「わかった。どんなことになるのか、知りたい。それに俺を倒せるかもしれないくらいの力を持った珠緒と闘ってみたい」 「助かる」 「今日の決闘(フェーダ)のことは話をする。それは構わないな?」 「ああ、問題ない。それと珠緒の次の休みの日までの間は、私は宿泊先にいる」 アキトからの確認に答え、その後YU奏はアキトと珠緒に向けてそう言った。 こうして非公式(アンオフィシャル)決闘(フェーダ)は幕を閉じた。 アキトはユリナ達のいる屋敷に戻り、今回の決闘(フェーダ)の内容と結果を伝えた。 もちろん、珠緒のことは伏せて。屋敷内のサロンはにわかに騒がしくなる。 「拳だけで、剣に勝つなんて!」 「見えない鞘(インビジブルワーク)をバックドラフトや円卓騎士章(インシグマ)の力で強化したということだろうか・・・」 レミリアは驚きの声を上げ、天音は考え込み始めた。 「でも、それってユニタリー・フォーム破りの1つでしかないんでしょう?」 「他にもユニタリー・フォームを破る方法ってどうするんでしょう?」 ユリナとミリィがそれぞれの疑問を口にした。 「うーん・・・自信はあったみたいだし、あの実力からして、嘘を言ってるとは思えない。むしろユニタリー・フォームを使えない場合の自力を身に付ける必要があることが分かったのは収穫だったと思う」 「そうね。アキトにはもっと強くなってもらわなくちゃ。卒業までの間には、大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)に参加してなかった強豪達と戦わなきゃならないんだから」 アキトはユリナの言葉に同じ思いであり、同時にこの間の大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)のことが脳裏に浮かんだ。 アキトやユリナ達の優勝した、この間の大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)は学園(キャメロット)在籍の強豪達が遠征で不在。あまりにも強豪が少ないことから、ユリナのいとこであるアーシェ姫、アーシェリアス・ペンドラゴンの率いる騎士団(ユニオン)が参戦したということがある。ユリナとミリィもアルビオン王族の一員だが、王位継承順としては、47番目と48番目。末席に近い位置と言える。対してアーシェ姫のペンドラゴン一族は、5大王族の一つ。遥かに王位継承順が高い。 それに、アーシェ姫はバックドラフトよりも強い円卓騎士章(インシグマ)の持ち主だ。 常にアーシェ姫と互角に戦えるくらいの力はまだ、リディアル・エレアノルトの面々の誰も持ち合わせていない。 「ああ」 アキトのもっと強くなるという意志を込めた言葉で、今日の非公式(アンオフィシャル)決闘(フェーダ)報告会は終わった。 アキト以外は自室や執務室、あるいは修練場へ散って行った。 「アキトさん、YU奏さんはどうでしたか?」 「はい。こちらは剣、相手は拳なのに負けました」 「あらら、やっぱり。流石に騎士団(ユニオン)アーサー所属だけありますね」 「マリエルさん、知ってたんですか?」 「はい。ちょっとご縁がありまして」 「そうなんですね」 「刀條流とも交流があるみたいで、みなもちゃんもYU奏さんのことは知ってますよ〜」 「みなもさんも知ってるのか。となると、十兵衛さんも知ってる?」 「ん〜、それは分かりませんね」 「もっと修練して強くならないと。ユニタリー・フォームも万能じゃない、というのは頭の中にはあったんですけど・・・今日の決闘(フェーダ)で、身を以って実感しました」 「また、明日から修練の厳しさを上げますよ」 「お願いします!」 その頃の珠緒。 次の休みの日がいつなのかをYU奏のライブスフィアへ送った後、少し考えていた。 臨死体験料理(アルティメット)のことは喜ぶべきことにしても、YU奏の言った「可能性」には驚いた。本当にそこまでのことが自分にできるのだろうか。 先日の大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)での自分の所属騎士団(ユニオン)の成績は中の下と言ったところだ。個人としての成績も騎士団(ユニオン)の成績とさほど変わらない。 このままの状況が続くようであれば、学園(キャメロット)の卒業も危うくなることは目に見えている。それは分かっており、修練にも力を入れている。自分の力で解決することという認識であるが、このような形で解決するということに思うことがないわけではない。 すると、YU奏からライブスフィアを通じて連絡が来た。 「遅い時間にすまない。珠緒の様子が気になったのでな。本当にバックドラフトを使える程の力があるのか?あるにしても、この問題に他人の力を借りていいのか、というところだろう?」 「はい」 「問題を解決する、解決できるのは君自身だ。私や君の周りの友人たちは解決への助力やアドバイスをしているだけに過ぎない。バックドラフトに関して言うなら、出せる潜在力はある。ただそれを引き出す為に君自身以外の力が加わるだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。自分の力だけでバックドラフトを引き出せるようになる者など、あっという間に数えられる程度の数しか存在しないはず。気にしなくていい」 「YU奏さん・・・」 「さて、休みの日のことについての細かいことは改めて連絡する。後でライブスフィアを見てほしい。お休み、珠緒」 「おやすみなさい」 翌朝。YU奏からのメッセージがライブスフィアに届いていた。 「次の休みの日に珠緒の部屋で原因を探るための逆行催眠を行う」と書かれている。 返信後、珠緒は学園(キャメロット)へ向かった。 「何か分かるのかな」 そんな気持ちが珠緒の中にあったが授業と修練に気持ちを切り替えて過ごし、次の休みがやって来た。予定通り逆行催眠が行われ、あることが判明した。 珠緒は過去に料理が関係する火事に遭遇しており、それが珠緒のバックドラフトに影響を与えているということ。だが、その過去を探ろうとすると逆行催眠すら妨げる防衛本能が働くこと。 この件をどう解決するか考えたYU奏は珠緒のライブスフィアにメッセージを送った。 「ええっ!?」 珠緒はYU奏からのメッセージの内容を見て驚いた。 「日本へ行く気はあるか?行くなら共に発つので、チケット等を渡す」という内容だったのだ。 日本へ行ってどうするのだろう、そしてなぜ日本に行く必要があるのかという思いが真っ先に浮かぶ。 「YU奏さん、どういうことですか?」 音声通信で即座にYU奏へ問う珠緒。 「この間の逆行催眠だけでは、珠緒のバックドラフトを具現化するまでには至らなかった。 もう少し、調べる必要がある。ただ逆行催眠すら拒否される程の過去のことが分かれば、珠緒はひょっとすると壊れる可能性もある。逆に過去のことを知って、今のままでいられるなら珠緒のバックドラフトはきっと発現するだろう」 「行きます!休学届に書く日数はどのくらいでいいですか?」 「日本で珠緒のことを聞きまわらねばならない。最低でも2週間、というところだろう」 「移動の時間を含めると、だいたい2週間半は必要ってことですね。じゃ、3週間休学ってことで申請します」 「わかった。3週間を無駄にしない為にも、こちらで先に可能な限り聞き込み候補は絞っておく」 「日本に行って過去と向き合うことができれば、バックドラフトを使えるようなる。そして、アキト君と闘えるようになると信じます!」 「では、チケットを手配してから再度連絡する。それに合わせて休学の期間を書けばいい。それと・・・備考欄に『騎士団(ユニオン)アーサー所属のYU奏からの指示』と書いておくといい」 3日後、珠緒の休学届が出された。備考欄の記載内容が学園(キャメロット)幹部を非常に驚かせ、受理されるに至ったのだった。 日本に戻ってきた珠緒。そして同行者のYU奏。 「疲れた〜」 「珠緒、まだ空港だ。珠緒の家のある町ではないのだろう?」 「はい」 「少し寄りたいところがある。別行動しても問題ないか?」 「大丈夫です。今日は移動日ですし、バックドラフトのことは明日からにしましょう」 「助かる。ありがとう、珠緒」 「私は先に行きますね」 「今夜には合流できるだろう」 そんなやりとりの後、珠緒とYU奏はそれぞれ別行動に入った。 とはいっても珠緒の別行動は実家に帰るだけ。 一方、YU奏はというと。ある町に来ていた。 「ここか・・・和奏の記憶にある町。そして、坂之上の家は」 ある町の旧市街。そこに坂之上の家はあった。 「みーちゃん、元気かな」 YU奏とは全く違う別人格のような雰囲気でYU奏の口から出た言葉。 それは坂之上未奏の双子の姉、坂之上和奏が妹の未奏を気遣うものである。 あまり家の前にいては不審者と間違われるのは目に見えている。 立ち去ろうとすると、誰かが突然抱きついてきた。 「わかちゃん!」 未奏だった。見た目こそYU奏だが、雰囲気が明らかに和奏だったからだろう。 泣いてこそいないが、大粒の涙が目に溜まっている。 「すまないが、私は和奏ではない。和奏の記憶が私にあるのは確かだが」 「ごめんなさい。ついわかちゃんだと。でもわかちゃんの記憶があるって?」 「君の双子の姉である和奏が交通事故死した時、私と波長があったのだろう。死の瞬間に彼女の全ての記憶が私に流れ込んできた」 和奏の記憶が流れ込んできたことをきっかけに、YU奏と名前の表記を変えたのだが、それは言わずにおいた。 「そんなことが・・・わかちゃんの記憶を受け入れてくれて、ありがとう。見たところ、決闘(フェーダ)の騎士なんでしょう?」 未奏はYU奏の手首に付けられているライブスフィアを見て言った。 「そうだ。用があって日本に来た。今日日本についたばかりで、寄りたいところがあると別行動している。これから一緒に来た者と合流する予定だ」 「これからもわかちゃんをよろしく」 「和奏がいたからこそ、日本に来ることになった要因に気づくことができた。私は君たち姉妹が生まれてきてくれたことに感謝する。また、いつかどこかで」 最後の言葉、「また、いつかどこかで」を言ったのはYU奏本人の意思によるものか、和奏の記憶が言わせたものなのかは分からない。 ただ、YU奏にも未奏にも良い出会いだったことだけは確かなことだった。 和奏の記憶が流れ込んでから、YU奏はバックドラフトに対しての感性が高まった。その高まりは味覚として現れた。これが、珠緒の弁当を味わったり、確かめるように食べていたことの真相だ。 「さて、珠緒と合流せねば」 ライブスフィアを頼りに、珠緒と合流したYU奏は珠緒の家に泊まったのだった。 転 トリコロール・リュミエール 翌日から珠緒とYU奏は珠緒の過去を知る人物たちに会い、昔の珠緒のことを聞きだしていった。 それらを総合すると、こういうことだった。 昔、珠緒が友達と料理をしていた時に火事が起きた。 火に包まれた家。出口である玄関とは真逆の端側にキッチンがあった為、玄関に向かうには火の中を突っ切らなければならない。 意を決して、友人と珠緒は玄関へ向かう。しかし、木造住宅であることに加え、非常に湿気の低い日というタイミングの悪さにより、焼けた家の一部が落下し始めるまでの時間がかなり早かった。 このままでは2人とも死ぬ、助かりたい。その一心があることを引き起こす。 珠緒の身に付けている髪飾り。それは微量ではあるがミスリニウムを含んでおり、バックドラフトを発動させることになった。 当時は単なる一般人の珠緒がバックドラフトのことを知っていることも、ましてや制御できるわけもない。それでも無意識に発言したバックドラフト、それも3色のバックドラフトのおかげで玄関までの道を進む。 どうにか玄関まで辿り着いた珠緒と友人。ドアを開けたところで倒れ、救急隊員に担ぎ出された。2人とも病院に運ばれたが、生還したのは珠緒のみであった。 友人を失ったショックに耐えきれなかった珠緒はその時の記憶が封じ込められた。 以後、料理をしようとすると、無意識の拒否反応なのだろうか。珠緒の料理は臨死体験料理(アルティメット)になるということが起きるようになったのだ。 それが分かったことで、まずはその友人の家で亡くなった友人に線香をあげる。 「今まで、ごめんね」 珠緒は今まで忘れていたこと・火事のことを含め、心から詫びた。すると、どこか心が軽くなったというか、背負っていたものが解放されたというか・・・そういう気分のような感覚のようなものを感じた。 その様子にYU奏は珠緒のバックドラフトが発動するであろう予感を味わっていた。 珠緒の休学期間の残りは1週間を切った。休学期間内にアルビオンに戻るには、明日日本を発たねばならない。 「珠緒、アルビオンに戻ったらバックドラフトを使う修練をしよう」 「YU奏さん、ありがとう・・・」 珠緒の部屋で、眠りに着こうとする最中のやりとり。 アルビオンに戻ってからのことに、楽しみと不安が入り混じる珠緒。 「私のバックドラフト、どんなのだろう・・・」 そう思ったのは覚えているが、いつしか珠緒は眠りに落ちたのだった。 翌日。珠緒とYU奏は日本を発った。アルビオンに戻り、アキトやロウ達に帰ってきたことを告げる挨拶をした後、YU奏が珠緒の修練相手を務めた。 「珠緒ならバックドラフトを必ず使えるようになる!」 YU奏にそう言われたが、バックドラフトの新しい発現条件はどんなものか、まだわからない。ただ、やはり自分が体験した火事に関係があるのだろうということは予想している。 珠緒にとって記憶を封じる程の出来事だったあの火事。その時のことを思い出してみる。友人を助けたかった。その思いを、強い思いを・・・ 「火事の時に使ったバックドラフトの力を今、私に!」 珠緒はようやく、バックドラフトを正しく発現させるに至る。 「珠緒、今バックドラフトが瞬間的にだが確かに出た」 「ホントですか!?YU奏さん!」 「本当だ。このまま修練を続けよう、珠緒」 瞬間的な発現であったが、YU奏は驚いた。普通、バックドラフトは1色しかありえない。だが3色だった。見間違ったのかと思ったが、バックドラフトの発された状態の時の空気の味からは、間違いなくあの3色が珠緒のバックドラフトであることが分かった。 YU奏は珠緒の修練相手を続けながら、あることをしようと考えていた。 数日すると、珠緒はバックドラフトを安定して出せるようになった。 しかし、まだ3色が入り乱れた状態でいる。今のままでは単にバックドラフトを出せるようになっただけにすぎない。 「珠緒。今は安定してバックドラフトが出せるようになっている。だが、今のままではバックドラフトを使いこなすには程遠い」 「どういうことですか?」 「特別なバックドラフト、それも今存在する騎士の中では唯一のもの。それを珠緒が持っているということだ。3色のバックドラフトを」 「3色?」 「赤・青・白。即ちトリコロール・リュミエールだ」 「トリコロール・リュミエール・・・」 「今の珠緒のバックドラフトは3色が入り乱れている状況。だが、1色ずつ使ったり、2色・3色を同時に使うということもできるはず。3色のバックドラフトを発現させているのだからな。それに3色のバックドラフトそれぞれに、特性があるはずだ」 「3色のバックドラフトの特性・・・」 「その特性を見極めて扱えるようにならなければ、珠緒のバックドラフトの発現は完全ではない、と私は考える」 「今日の修練が終わったら、3色のバックドラフトの特性について考えます」 その珠緒の言葉の後もしばらく修練を行った2人はそれぞれ部屋に戻った。 珠緒は自分の部屋に、YU奏は珠緒に出会った時のホテルの部屋に。 「3色のバックドラフトか・・・赤・青・白、それぞれどんなものなんだろう?」 自分のバックドラフトに関して思いを巡らす珠緒。 火事の現場を抜けるための力、それが3色のバックドラフトにあったはず。そこを起点に考えてみる。 結果、赤・青・白それぞれの特性で考え付くものがあるにはあった。ただ、それが正しいのかは分からない。明日の修練で確認してみることに決めたのだった。 翌日の修練は単色のバックドラフトの特性を見極めるものに切り替えられた。珠緒からそれぞれの色のバックドラフトの特性と思われる内容を聞き、YU奏も修練内容の変更に同意したからだ。 「珠緒、まずは赤いバックドラフトだ。珠緒の想定通りなら、私と互角に剣を交えられるはず!」 珠緒はバックドラフトを発現させる。火事の時のことを思い出し、YU奏の攻撃を打ち砕く必要のある建材に見立てて、発現しているバックドラフトを赤い色のみに絞り込んでいく。完全ではないが、それでもかなり赤い色のバックドラフトが発現するようになった。 YU奏が珠緒に攻撃を仕掛ける。赤いバックドラフトの力なのだろう、YU奏の攻撃に合わせたカウンターによる気合いの一撃を放つ。 「やああっ!」 珠緒の一撃がYU奏に見事にヒットした。 「なるほど。これが赤いバックドラフトか。カウンターのバックドラフトということだな」 ここまでの修練で珠緒の意気が上がっている様子に気づいたYU奏は休憩を提案した。 休憩している珠緒たちを見かけたのはロウだった。珠緒が騎士団(ユニオン)アーサー所属のYU奏に鍛えられているのは何かあると感じていた。そこで、ストレートに聞いてみることにした。 「おーい、蕨〜」 「あ、ロウ君〜」 「休学明けから、随分鍛えられてるみてえじゃねえか。何かあったのか?」 「それを答えるのはまだ先になる」 珠緒への質問に、YU奏が割って入る。その様子にロウは満足したようだ。 「ま、あんたが鍛えてるんだから、蕨に相当の強さがあるってこったろ?楽しみにしとくぜ」 珠緒という意外な伏兵の存在が本当に楽しみになったロウは、その場を去った。 「ロウ・ロアーズ。柳生第2士団の士団長だったな?」 「はい。とても強いです、ロウ君は」 「・・・ロウ・ロアーズに少しバックドラフトの修練に付き合ってもらうのもいいかもしれない」 「ロウ君にですか?ロウ君には、私がちゃんとバックドラフトを扱えるようになった時に見せてあげたい気もします」 「残り2色のバックドラフトの特性見極めを私が続けることはもちろんできる。ただ、ロウ・ロアーズならスピード系の技を持つ。青いバックドラフトの力と想定される防御や受け流しの力を覚醒させるのに良い修練相手に思えた」 「・・・YU奏さんに残り2色も見極めて欲しいです。YU奏さんのおかげで私のバックドラフトがあるんです」 「分かった。バックドラフトの特性見極めができ、珠緒が完全にバックドラフトを扱えるよう修練をしよう」 「はい!」 休憩が終わると、次は青いバックドラフトの修練に入った。 赤いバックドラフトの時の要領で、3色のバックドラフトから青いバックドラフトに絞り込む。 YU奏が珠緒に攻撃を仕掛ける。今度は手数を重視したスピード型の攻撃である。 最初は手数に押されていた珠緒だったが、だんだん慣れてきたのだろう。今はうまく防御と受け流しを行えているようだ。 「珠緒、赤いバックドラフトも使って攻撃に転じるんだ」 「はい!」 赤いバックドラフトも併用しようと、バックドラフトの発現具合へ少しだけ気を取られた珠緒はYU奏の攻撃に対応することができなくなり、ダメージを受けた。 「すいません。もう1回、お願いします」 結局、この日は赤いバックドラフトと青いバックドラフトの修練で終わったのだった。 赤と青、2色のバックドラフトの修練がさらに数日続いた。その結果、2色のバックドラフトを同時に扱うことができるようになり始めた。 「いいぞ、珠緒!赤と青は段々使えるようになってきている」 珠緒は赤と青の併用で、YU奏の攻撃を対応しきった後、今度は自分から攻撃に入った。 ここまでの修練で、バックドラフトの出し方・単色への絞り方・2色を同時に扱う方法はだいぶ身についている。3色目である白いバックドラフトも扱えるはずだ、という考えがあったからだ。 赤と青のバックドラフト併用から白いバックドラフトへ切り替える珠緒。 「!?白いバックドラフト!?」 YU奏は虚を突かれたが、珠緒の成長の証でもある。白いバックドラフトが発現して以後、珠緒の攻撃に反応が遅れる。突然死角から攻撃が来るのはこうまで連続するものだろうか。ハッと思いつくYU奏。 「これが白いバックドラフトの特性か!?」 死角からの攻撃や思いもよらぬ虚撃(フェイント)の攻撃。そういう攻撃を強化するということなのだろうとYU奏は理解した。 そもそも、珠緒が白いバックドラフトのみを発現した自体、意表をつくものであった。 「YU奏さん、もっと行きますよ!」 その言葉通り、白いバックドラフトも併用した2色攻撃を含め、珠緒の攻撃パターンは格段に増えた。それはトリコロール・リュミエールを成す3色のバックドラフトを完全に扱える寸前まで辿り着いたということだ。後は3色のバックドラフトの特性を全て同時に生かすようにバックドラフトを扱うことができれば、珠緒は自分のバックドラフトを完璧にものにしたと言える。 珠緒の様々な攻撃が繰り出される中、珠緒の練習剣(レイルエール)が折れてしまった。これでは修練を続けられない。 「剣が・・・折れちゃった・・・」 「珠緒のバックドラフトに剣、そしてミスリニウムが耐えられなかったのだろう」 YU奏に言われ、珠緒は剣と剣に使われているミスリニウムを見てみた。 「こんなにボロボロに・・・」 本来なら練習剣(レイルエール)が支給されてから、修練再開ということになる。白騎士は学園(キャメロット)から練習用の武器を支給されているからだ。だが、YU奏はあることを実行に移した。 「珠緒、今日の修練はこれで終わりにしよう」 「でも・・・」 「練習剣(レイルエール)では珠緒のバックドラフトには耐えられない、と言ったら?」 「そんな・・・それじゃ、私はどうすれば?」 「明日の修練は休みにして、私があるところへ連れて行く。そこで、主を待つ武器に珠緒を引き合わせる」 「まさか・・・専用武器(オリジナル)!?」 バックドラフトを使えるようになっただけでもYU奏のおかげなのに、今度は専用武器(オリジナル)までとは完全に珠緒の予想外だった。 「あの武器は珠緒しか扱えないだろう。練習剣(レイルエール)がこうなったのはある意味幸運、いや必然かもしれない」 YU奏にそこまで言わしめるという武器、それが明日目の前に現れるという。色々な気持ちが混ざりながら、今日の修練を終了することを珠緒は受け入れた。 翌日。珠緒とYU奏はある武器工房に現れた。 YU奏の姿を見つけ、工房の職人が対応する。 「YU奏さん!今日はどんな御用事で?」 「主のいなかった、あの武器にな」 「! わかりました。おやっさんを呼んできます」 「職人さん達と仲がいいんですね」 「普通、専用武器(オリジナル)を手に入れるには職人とコミュニケーションが必要だからな」 YU奏が普通のことだとばかりに珠緒に返答し、さらに続ける。 「今回ここに来た目的の武器は単なる専用武器(オリジナル)とは違う。どう違うかは後でわかる」 そこへ職人のおやっさんが現れた。話に上がっている武器を、YU奏に渡した。 「これは私の知り合いの職人、この工房の長が作ったものだ。しかし、今まで剣に認められる主が現れなかった」 そう言って、YU奏は珠緒の前に剣を差し出す。レイピアのような刺突系である。 珠緒は、剣を手に取った。その瞬間、剣が三つ又の矛のような姿に変わった。 「剣が三つ又の矛に!?」 「どうやら、剣が珠緒を主と認めたな。私の予想通りだ」 「予想通り?」 「ああ。長から、『三つ又の矛の姿を引き出すことができる者が、この武器の力の全てを引き出せる者だ』と聞いている。三つ又の矛のを成す部分にアダマンタイールが使われており、普通の専用武器(オリジナル)よりも使い手を厳格に選ぶのだそうだ」 アダマンタイールは液体のアダマンタイトである。希少なミスリニウムは使用者のバックドラフトを変化させるオリハルコンの特性を持つのだが、さらに希少なアダマンタイールはバックドラフトの状態を維持する特性がある。つまり真逆の性質である。また、アダマンタイールは、オリハルコンよりも非常に適合者を選ぶ。それ以上のことは詳しくはまだ知られていない。 バックドラフトは円卓騎士章(インシグマ)保持者でも1種類しか持っていない。それが普通である。だが、珠緒は3色のバックドラフトを持つ。この三つ又の矛であれば、珠緒の3色のバックドラフトを最大限に活用できる。 「これが、私の専用武器(オリジナル)!?でも・・・」 「受け取れない、か?使い手のない武器は意味がない。それに、珠緒と珠緒のバックドラフトは私に答えをくれた。そのお礼なのだ」 「お礼?」 「そうだ。ユノのことは知っているか?」 「シルヴェリアさんやアーシェ姫と共にいることくらいしか」 「ユノは、円卓騎士章(インシグマ)を持つに値するかを見極める判定者の役割をもつアンドロイドだ。アーシェ姫のところにいるユノが現在の最新型なのだが、次世代のユノの話が持ち上がっている。しかし、珠緒に対しては今のユノは正しく判定ができない。珠緒はバックドラフトを3色もつからだ。次世代のユノにどのような機能を盛り込むかに悩んでいたのだが、珠緒のように複数色のバックドラフトを持つものに対する正しい判定を行えるようにすればよいということに思い至った」 「ああ、それで」 珠緒は納得したという表情と声色で反応する。 「今は複数色のバックドラフトを持つのは珠緒だけかもしれない。だが、今後出てくる可能性はあるだろう。ユノが正しく判定できずに、円卓騎士章(インシグマ)を持つべき者に授与されないことは避けなければならない。次世代ユノが完成次第、珠緒にユノをつけたい。正しく判定できるかのテストも兼ねてだが。珠緒には新型ユノをつける価値があると私は判断している」 珠緒はYU奏の自分に対する評価に声が出ない。 「そんなに私を・・・」 ようやく、それを声に出すのが精いっぱいだった。 「専用武器(これ)を使えば、相手が近衛アキトであっても互角以上に闘えるはずだ」 「アキト君と互角以上に!?」 「普通の虚劇(フェイント)、バックドラフトを使う使わないという他に、剣か三つ又の矛か、3色のバックドラフトのどれを使うか?これだけ相手を迷わせられる要素が揃っている。それにユニタリー・フォームは完全無欠ではない。相手が強かったり、それに見合う独自の技を持っている場合に有効だが、武技のレベルがアキト以下の相手にはあまり役に立たない。つまり、珠緒は現時点でアキトを破ることの可能性が一番高い存在、と言っていい」 珠緒はその話を半信半疑で聞いている。 「その反応はもっともなこと。だが、どうするかを決めるのは珠緒自身」 「・・・私、アキト君達と互角以上に闘えるようになりたいです!」 珠緒の意志を確認したYU奏はこの武器を珠緒に渡した。 「これが、今日から珠緒の専用武器(オリジナル)だ。名前はまだついていない」 「何から何まで・・・YU奏さん、ありがとうございます」 珠緒は感謝の気持ちでいっぱいになり、涙声でYU奏に礼を言った。 「私よりも、長に礼を言ってくれ。長がこの武器を作らなければ、こうして渡すことはできなかった」 YU奏の言葉を受け、珠緒は工房の長に感謝の気持ちを目いっぱい伝えた。 武器の使い手が現れたことで、それまで抱えていた荷が下りたとばかりに、喜びと嬉しさが掛け合わされたような幸せな表情を見せる工房の長。 「私、この武器を使わせてもらいます!」 「お前さんなら、大丈夫。使いこなせる!」 長が珠緒に太鼓判を押した。 「はい!」 返事をした珠緒。YU奏と共に、工房を後にしたのであった。 工房から戻る途中、YU奏が珠緒に言う。 「明日は専用武器(オリジナル)に慣れるのと、白いバックドラフトの修練だ。目途がつけば、3色同時の修練に入る」 「はい!」 珠緒は、YU奏にやる気いっぱいという返事をしてみせる。 そこからは、珠緒とYU奏のデートの時間になった。市街地を遊びまわり、珠緒は特に精神的にリフレッシュしたのであった。 更に翌日。まずは白いバックドラフトの修練が開始された。 一昨日までの修練と違うことがある。それは珠緒の武器が専用武器(オリジナル)である・その専用武器(オリジナル)は通常のレイピアの形態をしているということだ。 「いきます!」 一昨日までの修練の復習として、青いバックドラフトを使うまでの剣戟が行われる。 まず珠緒が赤いバックドラフトを発しながらYU奏の攻撃を誘う。対するYU奏は珠緒の誘いに乗って攻撃する。 「てぇい!」 赤いバックドラフトによるカウンターの一撃がYU奏に入ったように見えたが、避けられてしまう。さらに、今度は手数重視の攻撃が放たれる。もちろん、青いバックドラフトを使うように珠緒に仕向けているということだ。 珠緒が青いバックドラフトで、防御と受け流しを行っている最中、YU奏が言う。 「珠緒、ここから白いバックドラフトを使って闘え!」 レイピアの形態と青いバックドラフトの相性が良いのだろう。練習剣(レイルエール)の時よりずっと防御と受け流しがうまく行く。レミリアの疾戟(ウインドシア)を相手にできそうだと珠緒自身が思ってしまう程だ。 青いバックドラフトは防御と受け流しを強化する特性だ。それだけで攻撃は成り立たない。攻撃に転じるには、まず基本は赤いバックドラフト。だが、それではこの修練の意味はない。 今は受け流しから白いバックドラフトによる死角や意表を突く攻撃へ繋がるようにするしかない。 赤と青のバックドラフト併用と同じ要領で、青と白のバックドラフトを併用する珠緒。 その様子を確認したYU奏はそのまま手数で押す攻撃を続ける。 青いバックドラフトで防御と受け流しながら、白いバックドラフトの特性を生かせる攻撃タイミングを狙っていたが、そのタイミングが来た。 「やあっ!」 受け流したYU奏の攻撃の1つから白いバックドラフトの特性を生かした死角攻撃を放ったのだ。 普通であれば食らうものだが、YU奏はそれを防いで見せた。 「いいぞ、珠緒!。さらに行くぞ!」 白いバックドラフトの修練が続く。修練の厳しさは随分と早く珠緒の体力を奪ったようだ。かなりキツそうな表情を浮かべる珠緒。 「珠緒、休憩だ。今のままでは修練を続けるには無理だ」 返事の代わりに頷く珠緒。しばらく休憩すると、白いバックドラフトの修練が再開となった。 「白いバックドラフトの修練の結果を見せるんだ!」 珠緒にYU奏の手数を生かすスピード攻撃が放たれる。 それまでの修練の成果が出たのだろう。今までの修練よりスムーズに赤と白、青と白のバックドラフト併用攻撃を放つ珠緒。 珠緒の攻撃を防御してから修練を中断するための一撃が放たれた。 「珠緒、よくやった!」 YU奏が珠緒を褒める。 「2色のバックドラフト併用までものにできたと言っていいだろう。後は、珠緒だけで修練していける。残る3色併用は明日からの修練だな。今日は終わりにしよう、珠緒」 「はい」 珠緒は3色併用について、1つ使えそうなパターンを思いついていた。それが使えるかどうかこれからの修練で試そうと考えたのだった。 3色のバックドラフト併用の修練が始まった。 まずはYU奏の攻撃を誘う。しかし、今回のYU奏は手数で押してくるような攻撃はしてこない。修練しても、実戦で使えなければ何にもならない。その為、より実戦向きの修練を、ということである。 青いバックドラフトを使いながら、YU奏に接近する珠緒。自分の剣がYU奏に届く間合いになった瞬間。青いバックドラフトを引っ込め、専用武器(オリジナル)を三つ又の矛に変わらせ、白いバックドラフトに切り替える。 今までの修練では、専用武器(オリジナル)を三つ又の矛にすることはしていなかった。 青と白のバックドラフトを併用する場合。 剣に近い側に青いバックドラフト、その外側に白いバックドラフト。そういう形での併用をしていた。 「これも、白いバックドラフトを生かすということか」 納得はできたものの、死角からの攻撃や虚撃(フェイント)には今まで以上に注意を払わなければならない。珠緒の専用武器(オリジナル)は三つ又の矛姿を見せており、武器の能力は全開になっていると考えた方が良い為だ。 攻撃は最大の防御とばかりに、白いバックドラフトでの攻撃をさせないようYU奏が一撃を放つ。 が、これは珠緒の狙った囮だった。即座に赤いバックドラフトを発現させ、カウンター型の死角攻撃を放つ。この一撃はわずかではあるが、YU奏を捉えた。 対アキト戦程ではないが、YU奏もバックドラフトを発動する。珠緒の修練にはずっと剣を使っていたが、バックドラフトを一切発現する必要はなかった。指導の為もあるが、正直珠緒の強さはバックドラフトを発現するに値しなかったのだ。 「私もバックドラフトを使わねばならないな。行くぞ、珠緒!」 バックドラフトありの攻撃がYU奏から放たれる。 珠緒は実感する。バックドラフトによりYU奏の攻撃の質や攻撃の際の重さが変わったことを。 「これが、バックドラフトを使う相手の力・・・」 「今は単純にバックドラフトを出しているだけだ。だが、私の攻撃の質や攻撃の際の重さが変わったことは分かるはずだ」 バックドラフトを出していなかったYU奏なら、2色併用までで何とかできるかもしれないという淡い期待もあった。だが、今のYU奏相手にはそんなものは消えている。 「3色併用しか・・・」 珠緒自身は、打てる手はそれだけと分かっている。珠緒の力を本当に認めたYU奏が暗に「3色併用して見せろ」と言っているのも。 ようやく、珠緒の考えを試す時が来たと判断した珠緒はスピード型の連続突きを放つ。 YU奏は防御することも、珠緒の突きに対抗することもできる。今回の選択は後者。 スピード型の突きで珠緒の攻撃を中和し、さらに連続突きで珠緒を攻撃する。 珠緒は即座に青いバックドラフトを発動させて凌ぐ。さらに赤と白のバックドラフトを青いバックドラフトの外側に連ねるイメージで、剣に近い側から青・赤・白のバックドラフトを発現させようとした。しかし、単純にバックドラフトを出す時とは勝手が違う。何せ意識したうえで、3色のバックドラフトを発現する必要があるのだ。 「はぁあ!」 不完全な3色のバックドラフトの攻撃が放たれるが、バックドラフト状態のYU奏に届くことはない。YU奏が珠緒の攻撃を捌いたからだ。 「珠緒、いいバックドラフトの攻撃だ。バックドラフトを意識的に3色扱う修練がまだまだ必要だが、それでも近いうちに近衛アキトと闘って大丈夫だろう」 YU奏の言葉を聞いた珠緒は、さらに数日の修練を重ねた。その結果、珠緒の意図した3色のバックドラフト併用の基礎は身に着いた。 「本来なら、学園(キャメロット)に珠緒のプロフィール更新を申請してもいいかもしれないが、武器の項目を更新するだけで色つきになったことを感づかれてしまう。ここはあえてプロフィールの更新はしないでおくのも『あり』だ」 「ロウ君に青いバックドラフトの覚醒を手伝ってもらう案を断ったんだから、アキト君との試合が終わるまでプロフィールは更新しないでおきます」 「よし。それならもうしばらく私と修練だ」 2週間の修練の後、YU奏は珠緒が完全にバックドラフトを自分のものにしたと判断した。 そして・・・ 結 非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ) 珠緒対アキト! 珠緒がライブスフィアでアキトに音声連絡する。 「アキト君。私と決闘(フェーダ)を。私がアキト君を破れる可能性のある存在か確かめて」 「わかった。決闘(フェーダ)の日時はこちらで決めて構わないか?」 「うん」 「細かいことを決めたら、珠緒に連絡する。決闘(フェーダ)、楽しみにしてる」 「待ってるね」 こうして音声連絡は終わった。 「珠緒、ついに近衛アキトへ決闘(フェーダ)を申請したか」 「どこまで通じるか分からないけど、全力でアキト君と決闘(フェーダ)します」 「大丈夫だ。今の珠緒は近衛アキトに勝てる可能性がある」 「YU奏さん・・・」 「珠緒の決闘(フェーダ)、見届けさせてもらう」 「はい!」 珠緒がしっかりと決闘(フェーダ)に対する気持ちを高めたのを見計らったかのように、アキトから「連絡する」と言っていた件が来た。今度はメールだ。 「5日後、非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ)にて。場所は・・・」 その内容について、もう一度アキトと連絡を取る珠緒。 「アキト君、非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ)だけど・・・私はYU奏さんに見てもらいたいから来てもらうつもりなの。アキト君がこの決闘(フェーダ)を見せたい人がいたらその人たちに声かけて。私もYU奏さんの他に見てもらいたい人を呼ぶから」 「わかった。ユリナ達に知らせておく」 「うん!」 2度目の音声連絡が終わったところで、YU奏が珠緒に声をかける。 「珠緒、私の方でこの戦いを見せたい人物に心当たりがある。構わないか?」 「?」 珠緒は誰を呼ぶつもりなのかという疑問をあからさまに浮かべた。 「誰を呼ぶつもりか、とういことならば2人程な。シルヴェリア・レオディールとアーシェ姫だ」 「えぇっ!」 「あの2人に珠緒のバックドラフトを見せる価値がある、と私は考えている。あの2人にはユノがいるからだ。最新世代のユノが完成したら、珠緒につけるつもりだと言ったろう?」 ユノをつける、ということは円卓騎士章(インシグマ)授与候補として認められたと同義であることは以前YU奏から聞いていた。つまり、この戦いを見せることで、珠緒に今後ユノがつくと示す意味があるということだ。 「シルヴェリアさんとアーシェ姫が私の決闘(フェーダ)を見るのをやめないようにしなくちゃ」 「シルヴェリア・レオディールとアーシェ姫を呼ぶこと自体には反対はないということだな。私の方で手配しておく」 YU奏はシルヴェリアとアーシェ姫にライブスフィアでメールを送った。 「騎士団(ユニオン)アーサー所属のYU奏より、非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ)に招待す。貴君ら、裁定者ユノと共にある者ならば、この決闘(フェーダ)に刮目せねばならぬ。該当決闘(フェーダ)は近衛アキト、蕨珠緒の両名にて闘うものなり」 シルヴェリアとアーシェ姫は騎士団(ユニオン)アーサー所属のYU奏がこうまで言う決闘(フェーダ)ならば、確かに見ておくべきだろうと判断した。 ただ、シルヴェリアとアーシェ姫には大きな感じ方の違いがあった。それが、招待の意志を示す文に続いている決闘(フェーダ)に臨む騎士の名前。アキトはともかく、珠緒については違っていた。シルヴェリアは「以前修練したことがあったが、それほどの強さではなかった」と珠緒のことを思い出したこと。アーシェ姫は単なる無名騎士としてしか認識しなかったので、なぜアキトが無名騎士と闘う決闘(フェーダ)の観戦招待を受けたのか疑問を持ったということだ。 珠緒は5日後の決闘(フェーダ)に向けた修練を行い、自らのピークを5日後になるよう持って行った。すぐに決闘(フェーダ)を行う5日後がやって来た。 非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ)の会場。ここにはある程度の人数の観戦者のみだった。だが後1人、この会場にいる。柳生士団の士団長、柳生十兵衛だ。用事を終えて帰ってきたところに、強い者達が集結しているという「闘いの匂い」を感じて、惹きつけられるように追いかけてきたのだ。 「シルヴェリアの野郎、何しにこんなとこへ?」 観戦者達とはずっと離れた場所にいる十兵衛から、そんな疑問が口に出る。 「アキトの決闘(フェーダ)か。相手は・・・誰だ?ありゃぁ」 アキトの所属するリディアル・エレアノルトの面々、それにユリナとレミリアに仕えているメイドのマリエルとセレーネ。珠緒のバックドラフトを見出し、修練したYU奏。珠緒が自分のバックドラフトを見せたいと考え招いたロウ。YU奏が観戦招待したシルヴェリアとアーシェ姫。また、それぞれの騎士団(ユニオン)の面々もいる。 アキトと珠緒以外を合計すると14人。14人でも観客がこの面子となれば、そんじょそこらの騎士では緊張の度が過ぎてしまうだろう。だが、珠緒もアキトも適度な緊張とリラックスを維持している。 「珠緒、強くなりましたわね」 レミリアが珠緒の様子を見て言った。以前、大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)予選の際に闘った時のような雰囲気は感じられない。さらにレミリアが疑問を口にする。 「ですが、珠緒の持っているのは・・・専用武器(オリジナル)ですの?珠緒がバックドラフトを使えるようになったと?」 「さあな。だが、あれはレイピア系の剣か?あの剣の柄、まるで普通の剣だ。レイピアとなれば、刺突速度を妨げないような柄にするか、持ち手を保護するような柄にするはずだ」 天音が違和感を口にする。 「多分、あの剣には何かある。だからこそ、あの柄になっているのでしょう」 「あの剣にある何か?」 ユリナが柄の疑問に対する予想というか、当然想定されることを返答する。それに対して、ミリィがどんなことなのかと問うた。 「きっと、お楽しみってことですよ」 マリエルが緊張感を緩めるようなニュアンスで言い放つ。 「蕨のバックドラフトを生かせるモンだろうさ」 ロウがリディアル・エレアノルトの面々の台詞を聞いてから、呟くように言った。 「確かに、その可能性はありますね」 以前柳生士団の第3士団長を務めたこともあるセレーネが同意する。 シルヴェリアの騎士団(ユニオン)とアーシェ姫の騎士団(ユニオン)はそれぞれ、静かに決闘(フェーダ)の開始を待っている。 いよいよ開始時刻が近づく。珠緒とアキトが会場の中央で相対する。珠緒もアキトも集中力を高める。そして、決闘(フェーダ)の開始時刻になった。 「掲げる剣に、誇りと名誉、騎士の矜持を―――」 「交える刃に、畏怖と礼節、己が全霊を―――」 前半をアキトが、後半を珠緒が宣誓し、さらに続く。 「決闘(フェーダ)、開戦!」 2人の声が重なり、ついに闘いの火蓋が切って落とされた。 修練の成果で珠緒の技量が上がっているとはいえ、まだアキトと互角という程ではない。 「立ち上がりは静かというか、ごく普通だな」 「何だ、これは。こんな決闘(もの)を見なければならないのか?」 シルヴェリアは普通に見ているが、アーシェ姫はひどく不機嫌に変わっている。 だが、アーシェ姫の不機嫌な時間は長くは続かなかった。 頃合を見計らって、珠緒が赤いバックドラフトを発現する。 「ここ!」 アキトの攻撃に合わせた赤いバックドラフトによるカウンター。見事にヒットして、アキトのライブスフィアが体力値5%減を告げる。 「バックドラフトを使えるようになっていたのか!専用武器(オリジナル)を使っているから、その可能性があるとは思っていたけど」 バックドラフトの攻撃を食らって、5%減で済んだのは幸運だとアキトは思った。間合いを取って、仕切り直す。 「アキトを相手に先制するとは。やるな」 珠緒の決闘(フェーダ)を見て、シルヴェリアが評価した。 「私が見ているんだ、このくらい出来て当然だ」 反対に、アーシェ姫が辛口の言葉を告げた瞬間。 YU奏以外の観戦者の誰もが信じられなかった光景が展開される。 珠緒が2色目のバックドラフトを出して見せたのだ。 これにはさすがに珠緒の相手であるアキトも驚きを隠せない。 「アキトの相手、面白ぇ!今は弱っちい感じがするが、これから強くなるぜ。あんな奴がいんのかよ!」 無類とも言われることすらある、十兵衛の闘い好き。 「こんな面白ぇ決闘(フェーダ)、止めるなんぞ無粋だな しかし、様子を目にした結果、引き続き決闘(フェーダ)を観戦することにした。 「赤いバックドラフトに青いバックドラフトか。とんでもないバックドラフト(もん)を持ってるなっ!」 そう言いながら、攻撃を仕掛けるアキト。珠緒はアキトの攻撃を全て防御・受け流す。 「てええい!」 そして赤いバックドラフトを併用し気合いの乗った一撃をアキトへ放つ珠緒。 「っ!あぶねっ!」 辛うじて防ぐアキト。 「な、なんですの!?珠緒のバックドラフトは!?」 「2色のバックドラフトですか、これはお嬢様では太刀打ちするのが大変そうですね」 レミリアの驚きに、セレーネのSっ気炸裂のツッコみが入る。 「なるほど。これがYU奏が観戦招待した理由か。確かに、これなら観戦に値する」 先程まで不機嫌だったのはどこへやら、アーシェ姫はしっかりとこの決闘(フェーダ)を見る気になったようだ。 「まだまだ!」 珠緒は攻撃をさらに続ける。珠緒の剣技はアキトと比べれば見劣りするが、それを充分打ち消しているのは珠緒のバックドラフトだ。 対するアキトは2色のバックドラフトを持つ相手と闘うこと自体が初めてで、攻めあぐねている感は否めない。 「珠緒、これならどうだ!」 アキトから虚撃(フェイント)を交えた攻撃が放たれたように見えた。見えた、というのはアキトの攻撃がされる前に、珠緒の攻撃がアキトにヒットしたからだ。 アキトのライブスフィアが体力値10%の減少を告げる。 「10%も減ったのか・・・なるほど、それも珠緒のバックドラフトか」 「うん。この白いバックドラフトもね」 珠緒の剣には赤と青のバックドラフトではなく、白いバックドラフトが発現していた。 「白いバックドラフトですか、あれは厄介そうですね〜」 マリエルがのんきに白いバックドラフトに対する感想を呟く。 「赤・青・白。なるほど、トリコロール・リュミエールというわけね。赤はカウンター、青は防御や受け流しみたい。だとすると、あの白いバックドラフトは・・・? ユリナは珠緒のバックドラフトの特性を赤と青については把握しているが、白いバックドラフトの特性は分からないとこぼす。 「もうしばらく様子を見ないと正しいかわかりませんが、私の思い当っているもの通りだとすると、珠緒はかなりの強敵です。珠緒を相手にすること自体で、ユニタリー・フォームは封じられていますし」 天音がユリナの言葉に続けた。 「お嬢様にはほぼ勝てない相手ですね、珠緒様は」 セレーネの容赦ない一言にレミリアは凹んだ。 「セレーネ、少しは私のことを」 レミリアがそこまで言った時、アキトがバックドラフトを発現した。 「3色のバックドラフト、確かに闘い甲斐がある。行くぞ!」 アキトのバックドラフトの特性は、「相手に対抗する」特性だ。 相手が柳生十兵衛のようなパワータイプであればパワーを増し、ロウのようなスピード型であれば、スピードタイプになる。のだが、そのどちらでもない珠緒には、アキトのバックドラフトも相性が悪い。 珠緒の攻撃を仕掛けて攻め続ける。しかし、ところどころアキトの攻撃がヒットすることで、珠緒の体力値を減らしてはいる。現在はアキトが20%減、珠緒が25%減だ。元のパワーや剣の重さといったことにより、攻撃力が大きいのはアキト。珠緒がチマチマ削っても、アキトの攻撃が1回当たれば、帳尻合わせになるかもしくはこちらの残り体力値の方が減ってしまう。 このままでは分が悪いことを認識している珠緒は、アキトに必殺技クラスの攻撃をさせるための賭けに出る。 大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)の際、レミリアが見せた一撃必殺系のスタイルをまねたのだ。もちろん、赤と青のバックドラフトを併用して。 「アキト君、もっと強く攻撃して構わないよ!」 「珠緒、私のスタイルで何をするつもりですの?」 真似されたレミリアは怒りと不思議さの入り混じった口調で、そう言った。 珠緒の挑発にアキトが乗る。大決闘祭(ヴァルトーク・フェーダ)のシルヴェリア戦で習得した五条纏う閃光(ブリューナグ)を放つ。珠緒の3色目のバックドラフトの白いバックドラフトが発動しようと、五条纏う閃光(ブリューナグ)が当たれば珠緒を倒せる。 「五条纏う閃光(ブリューナグ)!」 挑発を受けた時は確かに赤と青のバックドラフトだった。それが、今は青のバックドラフトだけだ。青いバックドラフトを発現している珠緒は、5発の攻撃を2発防いだ。もし珠緒の力がアキトくらいにあったなら、青いバックドラフトは全て防いでいたのかもしれない。 珠緒のライブスフィアが、体力値50%減少を告げるのが聞こえる。これで決闘(フェーダ)開始時の体力値から75%減。五条纏う閃光(ブリューナグ)程でないにしても、次に大きな攻撃を食らえば、負けが見えてくる。 しかし、そんなことは気にせずに青いバックドラフト発現状態からさらに赤と白のバックドラフト併用攻撃を仕掛ける。 五条纏う閃光(ブリューナグ)を仕掛けたアキトは攻撃直後の隙に珠緒からのバックドラフト併用攻撃を受け、ライブスフィアから体力値25%減が告げられる。これで試合開始時から比べると体力値が半分になった。 「このような者がいるとは・・・しかし、まだ何かあるような気がするのは気のせいか?あの剣の柄がレイピアにしては不釣り合いなのが気になる」 シルヴェリアはそう言った。 「なかなか面白いな、ヴァリウス」 アーシェ姫が、執事兼従者とも言うべき騎士団(ユニオン)のメンバーであるヴァリウスに言う。 「はい、アーシェ姫。正直、この決闘(フェーダ)が始まった時は見るに値しないと思いましたが、よもやこのような決闘(フェーダ)になるとは」 「アーサーのYU奏が我々を観戦させるに招待してきた価値はある。3色のバックドラフトなど、世界中の騎士でもあの娘1人だろう」 「は、おそらくそうでしょう」 珠緒には、アキトの体力の残り半分を削りきる必殺技はない。だが、まだ隠している手はある。それを絡めて、まずはアキトの体力を自分と同じにするしかない。 積極的な攻撃を珠緒が仕掛けるも、アキトはそれを捌ききる。一旦仕切り直し、とばかりに珠緒が離れた瞬間。珠緒の剣の間合いからは明らかに離れているのに、攻撃が飛んでくる。それも白いバックドラフトのおまけ付きだ。 「!?」 アキトはどうにか防ぐ。 この攻撃が出来たこと、それは剣に理由があった。剣が三つ又の矛のような姿に変わり、全長が大きくなっていたのだ。 「やはり、白いバックドラフトは死角や意表を突くという特性か。まさかとは思ったが」 「3色の中でも、特に赤いバックドラフト。あれを必殺技級の攻撃に対応されたら、自分の受けるダメージの方が大きくなりますね」 天音の言葉に、ミリィが続ける。 「あらあら。そうなると、アキトさんは勝つのに苦労しますね〜」 相変わらずマリエルは暢気に言っている。 「おいおい、俺の双ね颱風(タービュランス)みてーなもんかよ」 ロウは珠緒の武器を見て、思わず口にした。 「珠緒の専用武器(オリジナル)、すげえな。でも、その三つ又の矛姿の方はそれほど使ってないだろ?使い慣れてる動きじゃないからな」 「その通りだよ。でも3色のバックドラフトとこの武器の形態の使い分け。これで充分戦えるって私は信じてる」 確かに珠緒の言うことももっともなところはある。普通はバックドラフトのオンオフと虚撃(フェイント)を中心に考えれば事足りる。だが、珠緒に対してはどの色のバックドラフトが使われるのか、剣の形態か三つ又の矛のような形態かということも考えねばならない対象となる。考えねばならない量が倍はあるのだ。 珠緒は引き続き三つ又の矛姿の武器を使う意志を示している。矛の部分に、それぞれ赤・青・白のバックドラフトを発現させているからだ。 「面白いな、蕨は。武器の一部分にそれぞれのバックドラフトを割り当てるなど」 「珠緒、まだ未熟。でもアキトに対抗できてる」 デュラクディールのメンバーがシルヴェリアに答える。 シルヴェリアの騎士団(ユニオン)、デュラクディール。湖面を意味するデュラクと、レオディール家のディールを使った騎士団(ユニオン)名だ。 所属しているのはシルヴェリアとユノのみ。シルヴェリアがあまりに強い為、騎士団(ユニオン)は2名までという非常にイレギュラーなルールを適用されているのだ。 ユノは珠緒の実力を未熟と評価したが、評価したこと自体珠緒を認めたということだ。 「ユノが珠緒を認めたとなると、私も気を引き締めねばならないな」 珠緒の攻撃が始まった。3色のバックドラフトが常に発現し、武器上に維持されている。剣の時と違い、バックドラフトの使い分けはしやすいようだ。ただ、欠点もある。懐に入られたら、剣よりも弱い。 珠緒の攻撃に対応しつつ、アキトは懐へ入ろうとする。オーソドックスな対応ではあるが、剣と三つ又の矛、2つの姿を持つ武器にはそれは叶わない。 それだけではなく、3色のバックドラフト攻撃を混ぜられては正面切って懐に入るのは不可能だ。死角からというのも、白いバックドラフトを持つ珠緒には無理に近いだろう。 「さて、どう出る?近衛アキト」 YU奏がアキトの出方に注目する。 自らのバックドラフトの強さの段階(ギア)を上げ、1点を突く攻撃を行うアキト。 柳生十兵衛戦の時のようなパワータイプの攻撃にしている。青いバックドラフトと赤いバックドラフトの併用に対抗する為だ。白いバックドラフトのことは、今は無視している。この決闘(フェーダ)での珠緒からの攻撃を受けての体力値減少からすると、残り体力値を一気に持って行かれる可能性は低いと判断したのだ。 青いバックドラフトを全開にして、防御・受け流す珠緒。アキトの攻撃の重さから、赤いバックドラフト対策であると感じとり、白いバックドラフトでの一撃を入れる。 この攻撃でアキトの体力値が5%減少。アキトの体力値は開始時から55%減、珠緒の体力値は75%減。まだ開きがある。このまま闘い続けると、自分の方が負けると珠緒は感じ、何か手はないのかと考える珠緒。しかし、何も浮かばない。 対してアキトは何か手ごたえというか、何かを掴んだ様子の表情だ。 「珠緒のトリコロール・リュミエール、破ってみせる!」 アキトが珠緒に宣言する。当然、この宣言は観戦者達をアキトに注目させた。 「行くぞ、珠緒!」 アキトは手数勝負のスピード型攻撃を仕掛けている。それはロウの双ね颱風(タービュランス)を思わせるが、一撃が遥かに今までより重くなっている。 「珠緒にバックドラフトを切り替えるタイミングを与えない作戦ね」 なるほどと納得しながらユリナが言う。 「珠緒の様子からすると、手数で押しているだけではなく、一撃一撃がかなり重いようです。柳生十兵衛のようなパワー攻撃を、ロウの双ね颱風(タービュランス)のような速度で行っているのでしょう。あれでは、自分の体力値を減らしてしまう可能性もあります。それは分かったうえで、アキトも仕掛けているはずです」 天音の言葉に、リディアル・エレアノルトの者達はどれだけとんでもないことなのかと舌を巻いた。 「青いバックドラフトを全開にしてなかったら、多分あっという間に終わってた。でもこのままでも体力値を削られて終わっちゃう。それなら!」 強引に前へ出て、アキトに接近する。体力値を削られていくが、それでも何とか残っている。珠緒の体力値は残り10%。危険域に入ったとライブスフィアの音声警告が出る。 一方、アキトもかなり無茶な攻撃に体が悲鳴を上げており、体力値の減少が起きていた。 珠緒に比べれば残りは多いが、それでも残り15%。 矛の攻撃範囲に入ったが、その段階では珠緒の攻撃は出ていない。さらに近づいて、剣での攻撃範囲でようやく珠緒が攻撃する。 矛のそれぞれに維持している3色のバックドラフトを元のレイピアのような剣に戻す時に意図的に混ぜ合わせ、全ての色のバックドラフトの特性を持つ特別な一撃にしようと考えていたのだ。 三つ又の矛から剣の姿に戻しながら、全ての色のバックドラフトを融合しようとする珠緒。その様子に本能的に危険を感じるアキトだが、今行っている攻撃を止めるには攻撃は重過ぎ、速度は出すぎている。今この瞬間が、珠緒が勝つ唯一の瞬間。それを2人とも感じ取っていた。 「この、一撃に、わたしの、すべ、てを!」 体力値が間もなくゼロに近づこうとしており、息の上がる珠緒が最後の攻撃を放つ! 剣を覆う融合バックドラフト。見事にアキトを捉えるが、珠緒は体力を削りきられた。 「残り体力値計測中・・・」 全精力で攻撃を行い、倒れこむ珠緒。 アキトのライブスフィアから聞こえる音声。次に音声が聞こえた時、この試合に勝者が生まれるのか、引き分けなのかを告げる。 「近衛アキト、体力値ゼロ。よって、この試合引き分けです」 この様子に、観戦者達は驚いた。 「アキトが引き分けとは。蕨、大したモンだぜ」 ロウが珠緒を褒める言葉を呟く。 「引き分けと言っても、負けた気分だ。珠緒がこれほど強いとは」 「私がもう少し強かったら、アキト君に勝てたってことだね」 アキトは苦笑しながら、珠緒に手を差し伸べた。 「立てるか?珠緒」 アキトの手を取り、立ち上がる珠緒。 そこへYU奏がやって来た。 「珠緒、よく戦った。近衛アキトを相手に引き分けるとは」 「YU奏さん・・・」 「近衛アキト。お前の父、近衛シュンエイの使うユニタリー・フォームを私は体験している。お前のユニタリー・フォームはまだまだだ。シュンエイの使うユニタリー・フォームは本当に隙がない」 「はい!もっともっと修練して、親父を超えるユニタリー・フォームを身に付けます」 「大きく出たな。だが、そのくらいの方がいい。我が騎士団(ユニオン)アーサーの次世代候補として認めるのだからな」 「!!!」 「YU奏さん、前アキト君と非公式決闘(アンオフィシャルフェーダ)した時のアレ、本気だったんですね!」 「俺はユリナ姫の騎士団(ユニオン)、リディアル・エレアノルトでずっとユリナ姫を守っていく、そう決めてる。だから、アーサーに所属するつもりはない。それだけ評価してもらえるのは嬉しいやらびっくりやらだけど」 「アーシェ姫!シルヴェリア・レオディール!見ての通り、珠緒の強さは分かってもらえただろう。それにこのバックドラフトのこともある。次世代のユノが完成次第、珠緒にユノをつけることを伝えておく!」 YU奏の言葉に、デュラクディールのユノとアーシェ姫の騎士団(ユニオン)にいるユノ。2人のユノが特に反応した。ユノは見た目と決闘(フェーダ)に用いる武器が大鎌であることは同じだが、性格は違う。 「ユノ、YU奏の言葉に同意」 デュラクディールのユノは賛成の反応。 「確かに3色のバックドラフトとアキトを相手に引き分けは大したもの。でも円卓騎士章(インシグマ)候補まではやりすぎ」 アーシェ姫の騎士団(ユニオン)にいるユノは反対の反応。 「良いではないか。こんな面白い決闘(フェーダ)が見れたのだ。蕨珠緒、覚えておこう」 アーシェ姫は珠緒へ評価が決闘(フェーダ)前に比べると、まるで違う。それだけ珠緒を認めたと言えるだろう。 「蕨に負けないよう修練しなければ」 シルヴェリアはアキトとは違うタイプの面白い騎士が現れたことを本当に喜んでいた。珠緒を相手に決闘(フェーダ)をしたいと思ったのだった。 「蕨、すげえ闘いを見せてくれやがって!」 「ロウ君・・・」 「ホンっと、すげー闘いだったぜ!見てるだけなのに、こんな面白ぇ決闘(フェーダ)、そうそうないぜ」 珠緒でもロウでもない第3の声は柳生十兵衛だった。 「姉御!いつから!?」 「この決闘(フェーダ)が始まる直前くらいに戻ってきてな。何か、強そうな連中が固まってる匂いがしてな。で、来てみたってわけだ。アキトが闘う程の決闘(フェーダ)でなけりゃ、ぶっ壊してやろうと思ってた。が、あの戦いぶりだ。アキトよりも相手の方が大丈夫なのか、って見入っちまった。おい、お前珠緒とか言うんだろ?」 「はい」 「覚えとくぜ!いつか決闘(や)りあおうぜ!」 「はい!」 今度は力強く返事をする珠緒。 YU奏が声をかける。 「珠緒、共に過ごせて楽しかった。それに次世代ユノのことに関する答えももらえた。ありがとう」 「YU奏さん、私も臨死体験料理(アルティメット)の真実が分かって・・・バックドラフトも使えるようになって、専用武器(オリジナル)まで・・・ありがとうございますっ!」 「この先、修練を続けてもっと強くなるんだ。私が珠緒を所属させるのが当然、というくらいに」 頷いて見せる珠緒。少しだけ涙がこぼれている。 「では、またな。珠緒」 YU奏はそう言うと、会場を出て帰って行った。 アキトとロウは臨死体験料理(アルティメット)の真実とは何だろうと首を傾げあった。 珠緒が十兵衛に声をかける。 「十兵衛さん、もしよければ私の料理食べてください」 「お、いいのか!?助かるぜ!」 「姉御!蕨の料理は」 「十兵衛さん、珠緒の料理は・・・やめた方がいい」 「あん!?珠緒(こいつ)の料理は美味いって、あたしの勘が言ってんだ!文句は言わせねぇ!」 珠緒の申し出を受け入れた十兵衛を止めようとするロウとアキトだが、嗜められてしまった。 これ以上止めたら、ロウとアキトの身の方が危なくなる。 「分かった、分かった。姉御、倒れても知らねえからな」 仕方なく十兵衛の判断を受け入れることにしたロウ。 アキトの方は、ちょうど良いタイミングでユリナがアキトを呼んだ。 「アキト〜」 ユリナ達がアキトの元にやって来る。 「アキト、随分と無茶をしたな」 「珠緒の3色のバックドラフトを相手に、よく引き分けましたわ」 「引き分けになったけど、負けた気分だ」 天音とレミリアの言葉に返すアキト。 「さすがお嬢様、アキト様の傷を抉るとは。人のことを察せないのはもはや天性のレベルですね」 「セレーネ〜!」 レミリアはセレーネにいじられている。 「お兄様、大丈夫ですか?」 ミリィがアキトを気遣う。 「大丈夫だ。ありがとう、ミリィ」 返事をしながら、アキトは頭を撫でた。ミリィは喜んでいる。 「アキト、お疲れ様。でも、とんでもない強敵が現れたわね」 「珠緒があそこまで強いとは思わなかった。相手を甘く見ていた証拠だ。これからはどんな相手と当たっても全力で気を抜かずに闘う」 「ええ、お願いね」 ユリナはアキトを労いながらも、卒業とその先のことを意識していた。 「今夜はアキトのお疲れ様会するわよ!マリエル、準備をお願い!」 ユリナの一 |
2013/08/15
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (12:06 am)
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あらすじ とある湖。この湖に光牙達以外にも向かう者達がいる。この湖には一体何が? 序 湖 ユナの星読みの力で、ある湖に向かうことになった光牙達。 「この星読みが意味することって・・・一体?」 「でも、ユナの星読みが『その湖へ行け』って出てるんだろ?なら行こうぜ」 ユナの疑問に対する答えにはならない言葉を返す光牙。 「・・・そうね、行ってみれば分かるかもしれないわね」 翌朝、光牙達はユナを頼りに湖へ向かった。 その頃、氷河もある湖を目指していた。 バレエなどで使われる白鳥の湖の旋律が一瞬頭に浮かんでしまい、少し苦笑しながら頭を振った。 「どうやら、ここからそれほど遠くはないようだ。それに今まで感じたことのない小宇宙(コスモ)の持ち主がいるようだな」 氷河は湖を探し、さらに歩を進めた。 氷河の言う、感じたことのない小宇宙(コスモ)の持ち主。琴座(ライラ)のアリアは既に湖に辿りついていた。 「ここは・・・いや、ここがアポロンの竪琴!」 琴座(ライラ)のアリア。竪琴奏者になることが叶わなかった父、人工言語学者で特にソルレソルについて調べていた母を両親に持つ。 そんな環境の為、竪琴を弾くこと、ソルレソルを身に付けることも、さも普通のことである家庭環境で幼少期を過ごしていた。 両親はアリアが7歳になる直前、離婚する。2人は親権を争ったが2人だけでは決着が付かなかった。 最後の手段ともいえる裁判。裁判所の判断で母親に親権が決定し引き取られるも、父は幾度となくアリアの親権を求め裁判を繰り返した。 その繰り返される親権争いを嫌い、アリアはとある山の中に家出する。子供が1人で山に入り、彷徨い歩けば遭難するのは誰でも想像がつく。 しかし非常に幸運なことに・・・あえて孤立した環境に身を置いている独り者の家に辿り着いた。 何があったのかを話すと、その独り者はアリアを黙って受け入れた。 その独り者とアリアの日々が始まり、3年半。独り者に死が訪れた。残ったアリアはその家にそのまま残り、生活を続けた。独り者がアリアにプレゼントした竪琴を練習し、うまく弾けるようになる・ソルレソルを身に付けようとする生活を。 アリアがこの家に来て7年近くが経とうとする頃。もらった竪琴で最高の曲を奏でることができるようになった。 その数日後。琴座(ライラ)の聖衣がアリアの前に飛来し、装着。アリアが聖闘士として戦うことを琴座(ライラ)の聖衣に返答し、戦いの日々が始まった。 かつて湖だったのだろう、竪琴を象るような形の底に干上がった跡が残っている。 さらに竪琴の弦のように7本の樹が倒れていた跡もある。樹の跡の方が干上がった跡に比べると新しい。 「琴座(ライラ)、勝負!」 ハーモニカのエトがアリアに戦いを挑む。 「今までの戦いで、聖衣が随分と痛んでいるようだな。この戦いで散れ!」 「負けるわけにはいかない」 昴が蟹座(キャンサー)の黄金聖衣に黄金聖闘士候補として認められ、黄泉平坂で神々の音叉を手に入れることができたものの・・・音叉を鳴らしただけでは、パラサイトの時間停止を打ち破るソルレソルの「ミ」の効力が全世界に広がることはなかった。 その後アリアが旅を続けた結果、「アポロンの竪琴」が浮上してきた。アポロンの竪琴がどんなものなのかまでは分からなかったが、この場へ来て意味が分かった。 この湖の跡が、探していた「アポロンの竪琴」なのだと。 破 湖岸の闘い 「エト、退け!」 ハイペリオンが現れ、エトに撤退を命じる。 「ハイペリオン様!琴座(ライラ)は私の獲物」 「今の状況を分かっているのか、琴座(ライラ)を絶対に殺さねばならんのだぞ」 「し、しかし・・・」 「俺の相手は誰だ?」 そこへ新たな声がする。エトは撤退せず、その場に留まっている。琴座(ライラ)との勝負にこだわりがある故だ。 現れた声の主。それは聖闘士であった。 「その聖衣は・・・キ、白鳥座(キグナス)!伝説の聖闘士、氷河か!」 エトは氷河の出現に驚きを隠せない。 「氷河、伝説の聖闘士の1人か!」 「我が師カミュ直伝の氷の闘技を見せてやろう」 氷河の小宇宙(コスモ)が燃える。白鳥の舞から先手の一撃が放たれる。 「ダイアモンドダストーっ!」 「この程度の凍気!」 天地崩滅斬を一閃し、粉雪を払うかの如くものともしないハイペリオン。 「伝説の聖闘士の1人だけある。これほどの小宇宙(コスモ)とはな」 ハイペリオンが氷河の実力を認める。その氷河は白銀聖衣を見る。 「その聖衣は琴座(ライラ)・・・オルフェの後、誰も纏えるものがいなかったという話だが」 氷河の言葉を遮り、アリアが言う。 「話は後だ、今は・・・」 「ああ」 アリアの戦うことが先決、という言葉の暗黙の意味に 氷河は同調する。 氷河対ハイペリオンの闘いが始まった。 ダイアモンドダストやホーロドニースメルチなどを駆使するも、ハイペリオンを上回ることができない氷河。 アリアが氷河の加勢に動こうとしたその時。エトがアリアの前に立ちふさがる。 「ハイペリオン様、申し訳ありません。やはりこの場で琴座(ライラ)を、私が倒します!打ち取れねば、わが命を差し出しましょう!」 「そこまで言うなら・・・エト、琴座(ライラ)を倒せ!」 ハイペリオンの許可が出たことで、エトの小宇宙(コスモ)が増大していく。 「ハーモニカ オーディエンスブレイカーのエト、この場で決着をつける!」 アリアも小宇宙(コスモ)を燃やす。アリア対エトの戦いも始まった。 氷河対ハイペリオン・アリア対エトの戦いが始まり、時間が経った頃。 光牙達がアポロンの竪琴に辿り着き、2つの戦いを目撃する。 「闘ってる聖闘士は誰だ?」 特に琴座(ライラ)の聖闘士を見て、光牙達は驚きを隠せなかった。 「アリア!」光牙が真っ先に口にしたその名。マルスとの戦いの最中で死んだアリアのことを言っているのは光牙達の誰もがわかっていた。 「アリアに似てるやつはともかく、あと1人は誰だ?」 蒼摩がアリア以外のことを尋ねる。 「あいつ・・・聖域(サンクチュアリ)で会ったことがあるぞ」 光牙が思い出す。 「あの剣の傷・・・玄武を殺した天地崩滅斬か!」 「おそらくあいつが本当の持ち主なんだと思う」 栄斗の言葉に龍峰が反応する。 2つの闘いのうち、アリア対エトの戦いは予想よりあっさりとした結末を迎えることになった。 「G線上のアリアは通じないぞ!」 「確かに得意技の1つではある。しかし、あれが必殺技とは言っていない」 「!?」 「ストリンガーカノン!」 7本の弦から放たれる7つの音階すべてに最大の攻撃力を付加し、7色の軌跡を描いた音階が敵へ1点集中する。それは「主砲(カノン)」と呼ぶにふさわしい威力を見せる。 エトのクロノテクターを全身粉々にし、エトを倒してみせるアリア。 「エト、平和な時に出会っていれば・・・」 そんな思いを吐露しながらも、片膝をつく。 「大丈夫か!」 光牙達が駆け寄る。 「大丈夫だ・・・それよりハイペリオンを何とか」 何とかしないと、言おうとしたのだろう。しかし、ストリンガーカノンを放った小宇宙(コスモ)の使い方の為か、少しばかり気を失ったようだ。 「気を失っただけみたいだね、目が覚めれば大丈夫」 龍峰がアリアの様子を判断した。 「ダイアモンドダストーっ!」 氷河の声が聞こえてくる。 「ハイペリオンと戦っているのは・・・伝説の聖闘士の一人、白鳥座(キグナス)の氷河!」 技名を聞いて、龍峰が思い当ったとばかりに氷河の名を口に出す。 「伝説の聖闘士?星矢と共に戦ったっていう?」 「うん。氷の闘技の聖闘士、白鳥座(キグナス)氷河。その師匠である、水瓶座(アクエリアス)のカミュは水と氷の魔術師と言われてた。その氷の闘技を受け継いだ今・・・氷の闘技で氷河を超える者はいないだろうね 「伝説の聖闘士の1人だとしても、戦況は良くないみたいだな」 栄斗が氷河に加勢しようとする意志を見せる。 「ハイペリオンを倒せば、あいつらに相当ダメージを与えられるぜ」 「加勢したいのは山々だけど・・・中途半端な加勢は却って邪魔になる」 蒼摩が栄斗に賛同するも、龍峰が制止する。 「僕に考えがある。それができれば、少しはハイペリオンとの戦いが有利になるかもしれない。あの2人に距離を取らせることができればいいんだけど・・・」 「氷河にその考えを伝えたい、ってことか?龍峰」 「うん」 「分かった。ペガサス彗星拳!」 光牙の彗星拳が氷河とハイペリオンの間に炸裂し、仕切り直しさせる。 「ペガサスか、邪魔をするな!」 天地崩滅斬を光牙に向けて、振り下ろそうとするハイペリオン。しかし、ハイペリオン自身が思っていたよりずっとのろく振り下ろされた。 「少しは効いたようだな」 「ふん、今までの氷河の攻撃の蓄積の結果か。お前の力ではない」 その言葉と共に天地崩滅斬を振り下ろす。 光牙達はハイペリオンの攻撃をよけるとともに氷河のもとに集う。 その途中、アリアが目覚めていた。 急 デシールタと「ミ」 「氷河、手短に言います。三位一体攻撃なら」 「鷲座(アクィラ)と琴座(ライラ)がいるから、か?」 「はい。禁じ手の威力には及ばないと思いますが、ハイペリオンに立ち向かえる可能性は十分あります。うまくいけば天地崩滅斬を封印できるかも」 「ユナ、それと・・・」 「私はアリア。白銀聖闘士琴座(ライラ)のアリアだ」 氷河への話を聞いていたユナとアリアは頷く。 「ユナ、アリア!3人同時に仕掛けるぞ!」 アテナエクスクラメーションに倣い、3人同時攻撃を仕掛ける。 「オーロラエクスキューション!」 「アクィラ・シャイニング・ブラスター!」 「ストリンガーカノン!」 黄金聖闘士3人の同時攻撃に比べれば及ばないが、それでも個々に攻撃するよりもずっと威力がある。 「3人同時攻撃か・・・アテナエクスクラメーションの真似事で勝てると思ったか!ビッグバン並の威力と言われるアテナエクスクラメーションと言えど、天地崩滅斬には効かぬ!」 「そうでもないさ。白鳥座(キグナス)、琴座(ライラ)、鷲座(アクィラ)の3人が仕掛けているのだからな」冷静な氷河の声がハイペリオンに向かう。 「!!!」 ハイペリオンが焦りの色を見せる。 「狙いはそれか!」策にはまったとばかり、悔しさを顕に吐き捨てる。 今は3人の同時攻撃と天地崩滅斬がぶつかり合っている状態。 「アテナエクスラメーション・デシールタ!」 氷河・ユナ・アリアの3人が放ったアテナエクスクラメーション。防御していた状態から状態を変化させた。正四面体型に・・・さらに天地崩滅斬をその中に取り込んで。 「やった!うまくいった!」 龍峰が喜ぶ。 天地崩滅斬を手放さなければ、自分も封印されかねない威力であることはすぐに分かった。 「おのれ!我が天地崩滅斬をよくも!」 ハイペリオンは怒りを滾らせながら、撤退した。 ひとまずとはいえ、ハイペリオンを退けたことに束の間の喜びと安堵を覚える面々。 「なるほど、夏の大三角形を成す3人の同時攻撃ってわけか」 光牙は素直に感心している。その光牙に対して龍峰が頷いて見せた。 「だから氷河とユナとアリアを選んだのか」 氷河・ユナ・アリアの3人による同時攻撃だったことにも納得した表情を見せる光牙。 「3人同時攻撃か・・・アテナエクスクラメーション。すなわちアテナからは禁じ手としてされているものだな?」 栄斗が龍峰に問う。 「アテナエクスクラメーション?」蒼摩も不思議そうだ。 「そう。アテナエクスクラメーションは黄金聖闘士3人が同時に攻撃する禁じ手。その威力はビッグバンに喩えられるくらいすごいものなんだって」 「もしかして、紫龍から聞いたのか?」蒼摩は龍峰に尋ねる。 「うん。以前ハーデスとの聖戦の時に、冥闘士(スペクター)のふりをした元黄金聖闘士と現役の黄金聖闘士、それぞれの放ったアテナエクスクラメーションで、聖域(サンクチュアリ)が吹き飛びそうになったって。結局、父さんが加勢した現役黄金聖闘士側のアテナエクスクラメーションが勝って、元黄金聖闘士達は2つのアテナエクスクラメーションをもろに食らったって話だった。父さんが加勢するまでは、威力が互角同士で、暴発でもしたら、本当に聖域(サンクチュアリ)が消滅してだろうって、父さんは言ってた」 「禁じ手とも言えるアテナエクスクラメーションの真似事をしたからな、あれだけの結果がないと」 蒼摩が結果オーライとばかりに発言する。 「でも良かったんじゃねえの?ハイペリオンの天地崩滅斬を封じたんだぜ」 昴もそれに乗って発言する。 「むしろ剣を使っていた時の方が良かった、ということにならなければいいが」 氷河の心配の意味が分からない、と光牙達が不思議そうな顔をする。 「剣のように武器を使っている間の方が、自らの最大の力を使わずにいる。そういうヤツもいるということだ」 氷河は誰かのことを想定して言っているようだ。 アリアが氷河に問う。 「氷河、水と氷の魔術師の闘技を受け継いでいるなら・・・この湖を満たすことはできないか?」 「?どういうことだ?」 「この湖を復活させられれば、芸術の神アポロンの力を借りて、世界中の人々の時間停止を一斉に解除できるだろう」 そして、聖衣の中にしまっておいた神々の音叉を見せる。 「これは神々の音叉。芸術の神アポロンが使う竪琴の調律に使われた音叉だ。琴座(ライラ)の聖衣が、この音叉にソルレソルの『ミ』をぶつけて拡散させれば、世界中の人々の時間停止を解除できると教えてくれた。手に入れてすぐに試したが、効果がなかった。さらに旅を続けた結果、『アポロンの竪琴』が鍵になると知った。アポロンの竪琴が何なのかまでは掴むことはできなかったが、ここへ着いて意味がやっと分かった」 氷河はアリアの問いに頷いた。力をいかんなく発揮し、湖に水を満たして見せる氷河。 「後は、弦にあたる部分の樹を7本並べる」 「任せろ」栄斗が7本の樹を湖に浮かべて見せる。 すると・・・湖全体から光の柱がまっすぐと高々に伸びる。 アリアの持つ神々の音叉がその光に吸い寄せられ、空中に浮いている。しばらく浮いた後音叉自身が光出す。 その影響はすぐに琴座(ライラ)の聖衣に現れた。琴座(ライラ)の聖衣が新生、という形で。 「まさか、琴座(ライラ)の聖衣が新生するとは」 新生(ニュー)琴座(ライラ)の聖衣により、小宇宙(コスモ)が飛躍的に大きくなるアリア。 「交響(ひび)け、私の小宇宙(コスモ)!ソルレソルの『ミ』よ、今こそ世界中の人々の時間をもとに!」 ミの音、一音だけを音叉に向けて奏でるアリア。音叉は見事に世界中にソルレソルの「ミ」の音を拡散し、時間停止を受けていた人々全てを元に戻した。 「良かった・・・これでパラサイトの時間停止を人々に使うことはできない。もし行えば、アポロンを敵に回すことになる」 「よっしゃー!」 「すげーぜ!あんた!」 蒼摩と昴が大喜びしている。 「ユナ、頼みがある。すまないが、私の曲に合わせてアポロンに捧げる踊りを踊ってもらえないか?」 「私でいいの?」 「問題ない。ユナならアポロンに捧げるにふさわしい踊りを踊れると信じている」 アリアは頷き、曲を弾き始めた・・・その曲は白鳥の湖であった。 琴座(ライラ)が白鳥の湖を弾き、鷲座(アクィラ)が舞う。 夏の大三角形の星座に関するものが1つになったその曲と舞の間、ほんのわずかながら、心からの安らぎをその場にいた者達にもたらした。 そして、これから迎えるパラサイトとの戦いに勝利することを誓うのであった。 参考資料 聖闘士星矢Ω番外編 ミ・ライ 聖闘士星矢Ω登場人物wiki ソルレソルwiki ビックカメラ・コジマ・ソフマップグループ合同2013年夏の星座団扇 |
2013/05/29
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (11:25 pm)
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児ポ法の提出がされた。 この法案を廃案に追い込めればいいが・・・ そうでなければ、 「日本のアニメ・漫画は今日(2013/5/29)が命日となった。 ゲーム・コスプレもいずれ命日を迎える」 と思われる。 この児ポ法の提出を行ったのは、自民・公明・維新。 法案提出者や法案へ賛成してる全ての議員のリストがあれば、転載したい。 ちょうど、夏の参議院選挙からネットで投票ができるようになる。 この法案に反対の声を上げつつ、 3党の法案提出・比例代表の投票価値があるかを考えねばならない。 法案提出3党以外の議員でも今回の件に賛成する者や党がいれば、 そいつらに対しても同様に考えなければいけない。 海外のオタク達からもこの法案に対する反対の声を上げてもらい、 外圧にするようなことはできないだろうか? そういう力も借りないといけないくらい、危険な状況にある。 |
2012/03/14
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (11:04 pm)
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あらすじ ロックマンが退治したウイルスはいつもと何か違う感じがした。その件は熱斗の祖父、光 正の名前に繋がり、さらに発展して行く。 序 いつもと何か違う? 珍しく熱斗が宿題で机に向かっている。調べ物でネットにアクセス中だ。 調べ物が見つかったと、即座にその結果へアクセスする。 「熱斗くん、そのファイルは」とロックマンが止めようとするも、間に合わない。 「うわ、何だこりゃ!?」 「まりこ先生も言ってたよね?『ナビが安全か調べてからアクセスしなさい』って」 呆れつつも、ロックバスターを連発して熱斗のアクセスした先にいるウイルスを撃退。安全を確保するロックマン。しかし、このウイルスに違和感を覚えた。 「?何か違うような・・・」何か不安そうな表情を見せるロックマンに熱斗が尋ねる。 「ロックマン、どうした?」 「何でもないよ、熱斗くん。いくら時間がないからってちゃんとボクが調べてからアクセスするんだよ」 「わかったってば」 このウイルスの存在が、熱斗の祖父の名前につながるとは思いもしなかった熱斗であった。 起 祖父、光 正(ひかり ただし) 翌日の学校。メイル達に昨日あったことを話す熱斗。そこへカーネルから連絡が入る。「カーネル、久しぶりだね」カーネルにロックマンが挨拶する。 「ロックマン、すまないが光正博士の情報について知らないか?」 「うーん、急に言われても」 「何かあったの?」メイルのナビ、ロールがカーネルに質問する。 ロックマンとカーネルのやりとりは、ロールの他、ガッツマン、アイスマンにも知らされている。 「ああ、ここの所、通常のウイルスと違うヤツが増えていてな。で、そのウイルス(そいつら)の解析を行った(調べた)結果、光正博士が生きていた当時のウイルスを現代の技術でいじったものらしいことが判明した。この当時のウイルス情報については、光正博士とDrワイリーが分かるだろうというわけだ」 「なら、Drワイリーを捕まえればいいんじゃ?」 そこへカーネルのマスターである、バレル大佐が通信に加わった。 「そう思ってワイリーの行方を追っているんだが、まだどこにいるか掴めない」 「バレル大佐!」 「そんなわけで光正博士の方からと思って、ロックマンや熱斗に連絡したというわけだ」「俺も、じいちゃんのことは正直わからない。パパなら分かるだろうけど」 「光博士に聞いてみてもらえるか?最悪の場合、ロックマン達のような現代のナビでは太刀打ちできない事になる可能性がある」 「どういうこと?」メイルが熱斗のPETを覗き込んで炎山に問いかける。 「それは俺が説明しよう」炎山がさらに通信に加わる。 「今ネットセイバーとIPC協同で、このウイルスに関して調査・追跡している。このウイルスに感染した場合、ダークロイド等目ではない程の凶悪化がナビに発生するんだ。まだ数例だけだが、感染者が増えるたびに凶悪化している。まだ抑えられているが、このまままでは先が見えている」 「で、さっきのバレル大佐の話に繋がるわけだ」熱斗が納得した様子を見せる。 「非戦闘型ナビでも、グレイガやファルザーを倒したビースト能力のロックマンと同等の力を持ち合わせるように準備が進められているが、まだその準備に時間がかかる。それに感染の広がり具合によっては間に合わないことになる」 炎山とバレル大佐の話からことの大きさを感じ取る、熱斗とロックマン。 「わかった。学校が終わったら、パパに聞いてみるってことでいいか?炎山、バレル大佐」 2人は熱斗の申し出を了承し、通信が終わった。 その放課後。熱斗は父である祐一郎に事の次第を話し、祖父である光 正(ひかり ただし)のことを尋ねた。 「非戦闘型でも、それほどの力を持ち合わせるようにしなければいけないとは。随分な話だな。当時の情報の開示を科学省に掛け合ってみよう」 「頼むよ、パパ」 「熱斗君、僕たちも協力するよ」アイスマンをナビに持つ氷川透が協力を宣言する。 デカオやメイルも同意して頷く。 「それにしてもよ、そんな古いウイルスをいじってどうするんだ?」 「ガスな」ガッツマンもデカオの疑問に同意の相づちを打つ。 「多分だけど・・・たとえば、南極とか北極の氷が溶けたら、その中の微生物や細菌が現代に現れる。そうすると、現代に合わせて生き残るように変化する。本当なら、進化の途中でボクたちの体もそれに対抗できるようになるけど、それができない。そういうことを狙っているんじゃないかな」 「つまり、それをナビに対して行えば、世界を破滅させることだって出来るってことよね?でも、以前にそういうことあったんじゃなかったっけ?」 透の予想に、メイルが質問でツッコむ。化石となった古代ウイルスと戦ったことがあったためである。 「あの時は、ウイルスが変化や進化したわけではなかったからな。存在当時のままだった。だから、我々が対処できた。そういうことだ」バレル大佐がメイルの質問に回答する。 「熱斗くん、ボクたちも気をつけよう」 「そうだな」 承 光 正の遺した自立AI(もの) その頃、最新の感染が起こっていた。 IPCのナビ達が戦うが苦戦する。そこへ遠距離攻撃の加勢が行われた。 「サーチマン、弱点をサーチしろ」ライカの指示で、サーチマンが敵の弱点を探る。 「特に弱点は見つかりません」サーチ結果を伝えると、次の指示が飛ぶ。 「IPCのナビ達に直接加勢だ。いけるな?」 返事の代わりに前線に加わるサーチマン。 サーチマンのライフルがIPCのナビ達をサポートするも、次々にデリートされていくIPCのナビ達。 「このままではIPCのナビ達が全滅する」ライカがそう状況を把握した時・・・ 電脳空間に変化が起きた。一台の車と一台のバイクが現れた。バイクにはネットナビと同じ存在なのかどうかもわからない黄色い存在があった。 車がIPCのナビ達をガードしている間に、バイクに乗った謎の存在が敵を蹴散らす。 「何だ、あれは!?」状況を把握しようとするサーチマン。 「サーチマン、サーチとデータ分析して保存しておけ」 ライカの指示に従って、車とバイク、それに黄色い存在をサーチ・分析し保存するサーチマン。 サーチマンのサーチが終わった直後に車もバイクも、黄色い存在も電脳空間から消えた。 「どうやら、ネットナビではないようです。自立AIタイプの存在のようです」 「わかった。バレル大佐と炎山に報告を。後さっきのデータも渡しておけ」 「了解しました」サーチマンが先程保存したデータ共に報告書を送信する。 数十分後。炎山とバレルがライカに通信してきた。 「報告書と保存データにあった、黄色い存在。何か心当たりは?」 「特にない。いったい何者なんだ、あいつは・・・」 「1つ気になる点があります。あの黄色い存在をサーチした時、光博士の癖と似たものを感知しました。光博士に聞いてみるのはどうでしょうか?」 「ライカ、今回の件についてどう思う?」バレルがライカに意見を求める。 「あの黄色い存在が今回の件を解決する鍵になる可能性はあると考えています」 「確かに、その可能性はある。あのウイルス相手に、簡単に蹴散らしていたからな」 「炎山様、あの黄色い存在ですが・・・グレイガやファルザーのような異世界(ビヨンダート)の一部らしき痕跡が確認できました、どうなさいますか?」炎山のナビであるブルースがデータの解析結果を報告する。 「なるほど、異世界(あちら)の光正博士が関わった可能性があるということか・・・バレル大佐、ライカ。日本で動いた方が今回の件を解決しやすいと思う。どうだろうか?」炎山からの提案を受け入れ、バレルとライカは日本にやってくることになった。 祐一郎が熱斗からの話を受けて、科学省に光正在籍時の情報開示を求めて1週間後。 ようやく、許可がおり当時の情報を入手できた。 許可が下りるまでの間に最新の感染事例の一件に関しても情報を入手済みだ。 「流石だな、父さん。ネットナビが存在するよりも前にアレを作っていたなんて。アレなら確かに、今回の件を解決できるかも知れない」 バレルとライカが来日し、熱斗と炎山に加わる。 「また、一緒に動くことになるなんてな。よろしく、バレル大佐、ライカ」 「ああ」「こちらこそよろしく頼む」バレルとライカがそれぞれ手短に熱斗へ返事をする。 「熱斗、この間のおじいちゃんの件、情報が分かった。科学省へ来られるか?」 「大丈夫だよ。パパ、俺の他に、炎山とバレル大佐、ライカも科学省へ行っていい?」 「そうしてくれ、熱斗以外の3人が見たという黄色い存在についてもわかったしな」 熱斗以外の3人は顔を合わせて頷く。数十分後。4人は科学省で、光祐一郎と顔を合わせていた。 「早速だが、炎山君、バレル大佐、ライカ君。君たちの見た、黄色い存在。それは、ノートンファイターだ」 「ノートンファイター?何それ?」 「おじいちゃんが若かりし頃、今とネット世界は違っていた。そしてネット世界を安心して歩く為の方法もな。自分の知識・経験・感と共に、ウイルス対策のソフトが必要だったんだ。当時ウイルス対策のソフトはいくつもあったんだが、ある製品の広告キャラクターとして生み出されたのがノートンファイターなんだ」 「広告キャラクターとして生み出されたのなら、あのような戦闘力を持ち合わせているのはおかしいのでは?」炎山が祐一郎に質問する。 「ノートンファイターの設定が当時の資料に残っていた。つまり、その設定を元におじいちゃんがノートンファイターを存在させたんだ。もちろん武器やバイク・車の設定もあった。だが、ノートンファイターが活躍するような時代(とき)を迎えないように、という願いを込めて科学省内の特別プログラム保管システムに移された」 「日本の科学省の特別プログラム保管システムと言えば、世界でも有数の保管能力を誇るもの、それなのに何故ノートンファイターが?」今度はライカが質問する。 「答えはビヨンダートの一件。つまり、あの事件で、特別プログラム保管システムの一部が故障した。そしてネット空間にノートンファイターが出た。そして、プログラムに従った結果ビヨンダートに辿り着いた」 「なるほど、ビヨンダートの光正博士がノートンファイターの設定データを元に効力が発揮されるように手を加えた・・・と」バレル大佐が祐一郎の言わんとしていたことを先んじて発する。 「その通り」 「おじいちゃんと、ビヨンダートの光博士か・・・そういえば、トリルは元気かな」 「ある意味トリルとノートンファイターは兄弟と言えるかも知れないな、ビヨンダート(向こう)の光博士が関わったのだし」 「で、今ノートンファイターはどこに?」炎山が祐一郎に問う。 「分からない。今回の件、科学省でも協力することになったから、科学省でも行方を追っている」 「光博士、我々から先手を打つことは出来るか?」 バレル大佐の質問に、ライカも同意している。 「あの新型ウイルスの発生源がどこなのか、誰が作ったのか。そういうことが分かれば、手の打ちようはある」 4人は黙って祐一郎の言葉を聞いている。 「ライカ君、君とサーチマンでその辺りの情報を探れないか?感染したナビから分かる範囲で」 「了解しました、光博士」 「それと、今までの事件のデータからすると、今まではプログラムアドバンスが存在しなかったチップを、対応させる必要がありそうだ。現在、名人とそのチップのプログラムアドバンスが行えるようにしている最中だ」 「今までプログラムアドバンスが存在しなかったチップ?」 「シンクロチップさ」 「シンクロチップをプログラムアドバンス〜!?」 祐一郎の発言に、熱斗は驚いた。 「そうだ」 「そもそもシンクロチップって俺たちが使っている物以外ないんじゃ?」 「今熱斗が使っているものが壊れる前に予備を準備しておくのは当然のことだ。予備は準備できているのが1枚だけだったが、少し前にさらにもう1枚準備のメドがついた」 熱斗は、それに納得して気になったことを祐一郎に聞く。 「俺とロックマンで1枚。じゃ、後2枚のシンクロチップはどんな組み合わせなんだ?」「ロックマンとノートンファイター、熱斗とノートンファイター。つまり3つでのクロスフュージョンだ。『トライアングルフュージョン』と私は呼んでいる」 「トライアングルフュージョン!?ノートンファイターが絡んで、クロスフュージョンできるの?パパ」 「多分できると考えている。ビヨンダート(あちら)の光正博士が手を加えたとは言え、元々は熱斗のおじいちゃんが作ったものだからな。パパの作り出すものには、おじいちゃんと同じ様な癖というか傾向がある。それは、ナビと自立AIの違いがあっても同じだと思う」 「熱斗、ロックマン、ノートンファイター。光家3代のトライアングルフュージョンならいけるだろうと?」 「その通り。IPCの副社長だけあるね」 「確かにノートンファイターの力を取り込む・活用できるなら、それにこしたことはない。しかし懸念点があります。1つはトライアングルフュージョンの為のチップがいつ完成するか?もう1つは、熱斗がトライアングルフュージョンに耐えられるか?ということです」さらに炎山が祐一郎に質問する。 「そこで、頼みがある。ノートンファイターを見つけたら、何とかこちらに送って欲しい。ノートンファイターは自立AI型だから、クロスフュージョンできるように改造する必要がある。それと、クロスフュージョンより熱斗の体力が消耗することはおそら避けられない。つまり、今回の件でトライアングルフュージョンできるのは1回だけと考えてくれ。当然使いどころもな」 「パパ、シンクロチップは預けたほうがいい?」 「今はいい。ノートンファイターの改造が終わってからだな」 「じゃ、チップが必要な時は言って」 「できるだけ早く、そうしたいとは思っている」 「大丈夫、何とかなるって」 熱斗の楽観視した言葉の後、4人は科学省を出た。 ライカは感染したナビからの情報収集、ウイルスの発生源や作成者特定。3つの目的の為別行動となり、単独行動に入った。 バレルはというと、炎山の手配でIPCが用意した部屋に滞在し行動することになった。「じゃ、俺は家に帰る」熱斗は帰宅する意思を告げ、先に歩き出した。 「わかった。何かあれば、互いに連絡しよう」 そうして、残った3人も分かれた。 熱斗達が科学省を出た後、数日前に届いた3枚目のシンクロチップを開封する祐一郎。「新たな予備として準備したはずがこういうことになるとは」 手元の2枚のシンクロチップを目の前に、トライアングルフュージョンの完成を再度決意するのだった。 トライアングルフュージョンの完成を目指し、シンクロチップの改造を進める光祐一郎。助手として名人がいる。 「名人、そっちはどうだ?」 「順調です、光博士」 「しかし、またとんでもないプログラムアドバンスを思いつきましたね」 「ノートンファイターの存在を知った時、多分トライアングルフュージョンがいけるという確信のような閃きがあったんだ。熱斗はクロスフュージョンを体得しているくらいだから、大丈夫だろうとも思った。で、こうして名人に手伝ってもらっているわけだ。チップの改造をした後は、ノートンファイターの改造が終わればほぼ完了だ。そこから先は熱斗次第ということになる」 「しかし、何故あんなウイルスが出てきたんでしょうか?」 「ビヨンダートの件で、こちらとあちらが繋がった際に、活動停止していた古代のウイルスがビヨンダート(向こう)で目覚めて、ビースト能力とまではいかないがそれなりの力を手に入れたという可能性があると考えている」 「つまりは、自然発生ということですか?IPCの解析では人工的に手を加えられた可能性があるということでしたよね?」 「もともとはこちらのウイルスだったが、ビヨンダートに流れて向こうで進化・能力獲得した。その結果、こちらへ出現できる力を持つようになり、こちらで感染させているということじゃないだろうか。ビヨンダート(あちら)でのウイルスの自然な進化と、こちらで人工的に手を加えて誕生させたウイルスとが非常に似通ってしまったのだと思う」 「やれやれ、ビヨンダートの一件がこんな事件(こと)を引き起こすとは」 「まったくだ。でも、今回の件で2つ良いことがある。1つはトライアングルフュージョンを実現できるということ。もう1つは、親父のつくった形見とも言えるノートンファイターだ」 「なるほど、言われてみれば確かに」 「名人、改造の手助けを頼む」 名人は頷いて、祐一郎と共に作業を進めた。 転 新しいプログラムアドバンス 熱斗が科学省を訪れた翌々日。熱斗達の授業中に、通信が入った。 ひとまずロックマンが熱斗に気づかれないよう応対する。 「ブルース、何かあったの?」 「ノートンファイターの手がかりが掴めた。来てくれないか?」 「分かった。今熱斗君達は授業中だから、大丈夫だと思う。でも、授業が終わる前に戻らなきゃいけないけど」 「ロックマン、1人で行くつもり?」 「1人で行くなんてずるいでガス」 「僕たちも行く」 「じゃ、みんなで行こう。この授業時間が終了する前に戻ってこよう」 ロックマン、ロール、ガッツマン、アイスマンはブルースと共にノートンファイターの元へ向かった。 「このあたりにノートンファイターがいるのか」ロックマンが呟く。 ロール達も辺りを見回して探す。そこへあるナビが姿を見せる。 「サーチマン!」 「どうやら、このワクチン作成工場跡がノートンファイターの根城らしい。だが、・・・」 「あ、あれ!」ロールが声を上げた。そこには、車とバイクがある。 「車とバイクに気づいて、調べてみたんだが、ノートンファイターはいなかった」 「工場の制御室とかはどうかな?」 「ああ。そこを調べようと思っていたところへ、ロックマン達が現れたというわけだ」 「制御室へ向かおう」ブルースが先頭で皆、制御室へ向かった。 「いたでガス!」 いくつかあるワクチンカプセルが作動していた為、どれかにいるのは分かっていた。皆で手分けして探した結果、ガッツマンが見つけた次第である。 「なるほど、そういうことか」サーチマンが納得した表情を見せる。 「何か分かったの?」アイスマンがサーチマンに質問する。 「このワクチン、ウイルスの根本が同じなら、いかに進化や能力を獲得しても、防げるシロモノだ」 ロックマンがノートンファイターのカプセルを開けようとする。 「待て、まだ調整中だろう。カプセルのタイマーを見ろ」 タイマーの残時間が残り数分を示している。 残りが3分を切ったところで、工場が攻撃を受ける。 「まさか、敵?」ロールは不安そうだ。 「戦うぞ!気を引き締めて行け!」ブルースの一声が、戦闘モードへ皆の意識を切り替えさせる。 サーチマンとロックマン以外はこのウイルスと初の戦いである。 「属性の弱点はない。各自が得意な戦い方でいい」サーチマンからの情報により、得意とする戦法で戦うロックマン達。 戦いの最中、ノートンファイターの調整が完了、カプセルから出てきた。 すぐにウイルス反応を確認して向かうのであった。 手強い、それがロックマン達に共通する認識だった。いくつも発生した感染事件を通じ、ロックマンが初めて戦った時よりずっと強くなっているのは感じ取れた。次第にジリ貧に追い込まれていく。 「そういえば、もうノートンファイターが目覚めているはずだ。姿を見せてもおかしくない」 「何とか、ノートンファイターの力を借りられないかな?」ロックマンが誰かに向けてというわけではないが、提案のように言う。 「アイスマン、氷で足止めできる?」ロールの提案がアイスマンに向けられる。 「やってみる!」 アイスマンが氷の息で、ウイルスを凍らせようとする。止まったのは一瞬だけで効果はないと言って良い。 その状況下、ロールがノートンファイターの存在を感知する。 「ロックマン、ノートンファイターが来たわ!」 ロールの言葉に併せてロックマンが振り向いた。そしてノートンファイターと目を合わせた瞬間・・・それは突然発動した。 「ええ!?何でロックマンとノートンファイターがソウルユニゾン出来るの!?」 ロールの疑問は当然だ。ブルースもサーチマンもガッツマンもアイスマンも驚いている。ノートンファイターの黄色が体に現れたロックマン。完全にソウルユニゾン出来ている証拠である。 ノートンソウルのロックマン、ノートンファイターが2人で一斉に攻撃し、あっさりとウイルスを撃退した。 「サーチマンから話は聞いていたが、これほどとは」ブルースが呟いた。 戦闘が終わってもノートンソウルが解けないロックマンはこの状態に意味があると考えていた。 「ブルース、サーチマン、今ならノートンファイターを科学省に連れて行けるんじゃないかな?」 熱斗達の授業終了まで後5分。大急ぎで、科学省へ向かったロックマン達。あの工場にあった車とバイクと共にである。ノートンファイターを祐一郎に預けた所で、ロックマンのソウルユニゾンが解けた。 「ありがとう、ロックマン。その表情からすると・・・何でソウルユニゾンが解けなかったのか?」 「はい」ロックマンはそれだけ返事をした。 そこへバレルがやって来た。 「ロックマン、カーネルを向かわせられず済まなかった。光博士にカーネルのことについて確認をしていてな」 「バレル大佐、すみません。今は熱斗君の授業中で、すぐに戻らないといけないんです」「わかった。では後にしよう」 「ありがとうございます!」 学校に戻ったロックマン達は、それぞれ何があったのか話したのであった。 昼休みにノートンファイターを科学省に連れて行ったナビのオペレーター達が集まっていた。 「しっかし、驚いたぜ。まさかロックマンとノートンファイターがソウルユニゾンするなんてな」 「これで、光博士の言っていたトライアングルフュージョンが出来る可能性が更に高まったな」 「トライアングルフュージョン?何それ?」 熱斗がトライアングルフュージョンについて説明する。 「というわけなんだ。まだチップの完成には時間が掛かるみたいだけど、名人さんも手伝ってるし、そのうち完成するんじゃないか」 「トライアングルフュージョンか・・・熱斗君の体力だけじゃなくて、もう1つ気がかりな点があるね」 「何が気になるの?」透の気になる点があるという発言に、メイルが問いかける。 「時間だよ。トライアングルフュージョンの成功率や熱斗君の体力が問題ないとしても、トライアングルフュージョンの完成時間があまりにも掛かると意味がない」 「そっか、それは考えてなかった。パパはその辺りを考えてるだろうから、心配はないと思う」 「多分だけど・・・トライアングルフュージョンをする時は、クロスフュージョンより無防備になるだろうから、僕達が熱斗君やロックマンを守らないとね」 透の懸念は杞憂ではなかったことが後に証明される。 科学省の光祐一郎。ノートンファイターの改造をする為の事前解析を行っていた。 「なるほど。本来この部分が、機能しないように作っていたんだな。それをビヨンダートの光博士が機能するようにした、と」 「ノートンファイターの解析はどうですか?」 名人が状況を確認する。 「大部分のところは見ることができた。後2時間あれば、解析終了できるだろう」 「わかりました。チップの方は順調です。当面はノートンファイターの解析待ちです」 「じゃ、食事に行ってもらって構わない。僕はさっきサンドイッチを食べたから大丈夫だ」 「それでは、行ってきます」 名人が食事に出かけて30分後。 「ふぅ・・・親父が若かった頃に、これだけのものを既に作っていたのか・・・この手のことは僕が世界初だと思っていたが、先を越されていたとは」 ノートンファイターの大部分の解析が終了し、その結果分かったことがある。 それは、祐一郎がPETやナビを生み出した際の理論の根幹と同様な理論の元で、自立AIとしてのノートンファイターが生まれていたことである。 「ノートンファイターは、いわば、PETやナビのご先祖様ってことか」 と同時に、納得できたことがある。 「親父の作ったノートンファイター、僕の作ったロックマン。これだけ似ていれば、ソウルユニゾンできるのも不思議じゃない。違いは、あくまでプログラムに従う自立AIか、自らの意思で行動が出来るナビかの違いだけだ」 ワイリーと同様に科学省で名を連ね、著名であった光 正(ひかり ただし)の偉大さを改めて知った祐一郎であった。 そんなことを思っていると、そろそろ名人が帰ってくる時間となった。 「ただいま戻りました」 「お帰り、名人。今ノートンファイターの解析が終わったところだ。そちらに解析データを送る。ノートンファイターの改造を手伝って欲しい」 「もちろんです」 2人は早速、ノートンファイターの改造を開始した。 「しかし、あのデータを見て驚きました」 「だろうね。僕も驚いたというか、親父のすごさを知ったよ」 「PETやナビが生まれる以前に、既に同様のものが存在していたなんて・・・しかも数十年も前に」 「もともと広告のキャラクターとその設定をネット空間に存在させたものの、あの能力を解放するような事態にはなって欲しくなかったんだろうな、親父は。だから対ウイルス用の能力をブラックボックス化した上で封印した。だが、ビーストの一件で、ビヨンダートへ出た際、封印が解けてしまった。そこへビヨンダートの光博士がブラックボックスを解除して能力を発動できるようにした。で、本来はビヨンダートの中で活動するはずのノートンファイターが、何故かあちらからこちらへ移動する能力を身につけてしまったというのが僕の想像だ」 「なるほど、そういうことだったんですか・・・」 「まぁ、僕の想像でしかないけどね。まずはノートンファイターを改造して、トライアングルフュージョンを完成させないと」 「わかってます、光博士。急いで終わらせましょう」 祐一郎は熱斗に連絡を取り、シンクロチップを受け取った。これでトライアングルフュージョンに必要な3枚のシンクロチップが揃い、さらに作業を進めるのであった。 2人の作業は想定よりも時間がかかった。その原因はトライアングルフュージョンの為の調整が難航した以外、もう1つある。 「チップもプログラムも何とかなりましたね、光博士」 「が、もう少し早く完成させたかった。あのウイルスの凶悪化はかなりの速度で進んでいる。それに実体化の能力を持ったものが過半数を占めている。もうネット警察やIPCのナビでは蹴散らされるだけになってしまった。それだけじゃない、今や実世界の警察や一般のナビにすら被害が予想以上に出ている」 「とは言え、今回はノートンファイターの車とバイクにも仕掛けを施しましたし、熱斗君達の助けに充分なるでしょう。何より、ノートンファイターを自立AIからネットナビとして転換できた点は非常に大きいですよ」 「ノートンファイターのネットナビ化はともかくとして・・・ネットナビが普及している世界で、あの手の仕掛けをすることになるとは思わなかったけどね」 「まったくです」 2人の作業はこれで終わった。後は熱斗が実戦の時に、ノートンファイターを送るだけである。 科学省から熱斗の元にシンクロチップ3枚が届けられた。これでウイルスに対抗する手段を得た熱斗。それに喜んでいる時間はほんのわずかしかなかった。 学校からほど近い広場に実体化ウイルスが出現した。元は非常に大きいビルが2つ並んでいたのだが、老朽化の為取り壊され、市民の憩いの場として広場になった経緯がある。並の広さの野球場を5、6個合わせても足らないくらいの大きさを誇っている。 今回現れている実体化ウイルスはそれほど大きくはない。しかし、広場をほぼ埋め尽くすほどの数だ。数百どころではないのは見て取れる。 学校が終わって下校中の熱斗達に連絡が入り、広場へ向かう。そこへライカ・バレル大佐も駆けつけてきた。 広場に向けて、クロスフュージョン用のフィールド形成エネルギーが放出され、ネットナビが実体化可能になる。それだけではない、広場から実体化ウイルスが出ないようにするバリアとしても機能するのである。 「いくぞ、ロックマン」 「うん、熱斗君」 「シンクロチップ、スロットイン!クロスフュージョン!!」 メイル、デカオ、透、ライカ、バレルは1カ所に固まりながら、ナビをオペレートして戦っている。 熱斗とロックマンがやや離れた位置で、ウェポンチップのプログラムアドバンスを駆使して戦っているものの、数の多さが問題になっている。 状況を科学省から見ている祐一郎と名人。名人がノートンファイターを転送準備する。「熱斗、今から名人がノートンファイターを転送をお前のPETに転送する。ノートンファイター共に戦うんだ」 「分かった、パパ」 すぐにノートンファイターが転送され、熱斗はノートンファイターを実体化させる。 「ソウルユニゾン!ノートンソウル!」 熱斗はすぐにトライアングルフュージョンを実行しなかった。1つは透が言っていた「時間」の点。もう1つは「シンクロ率」を気にした為である。ソウルユニゾンには2つ利点がある。1つ目は、ソウルユニゾン相手の能力をロックマンが使えるようになるだけでなく、ソウルユニゾン相手もそのまま行動できる。いわば同じ能力の持ち主が2人というか2体というか、そういうことなのだ。2つ目は、シンクロチップ程シンクロ率を要求されることはないにしても、シンクロ率がそれなりに必要であること。と同時に、熱斗とノートンファイターのシンクロ率に関しても簡易チェックともいうべき結果が出るからだ。 ソウルユニゾンで敵の数を減らし、トライアングルフュージョンが必要になった時の時間や状況を確保できるようにするのが熱斗の狙いである。 ノートンソウルのロックマンとノートンファイターが動いた為、さきほどに比べれば数は減ったもののまだまだ数が多い。一方、カーネルやサーチマン達は苦戦より防戦に近い状況を呈していた。 「メイルちゃん、デカオ君、透君」 「何ですか?」 「今からノートンファイターの車とバイクをそちらへ送る。使って欲しい」 「わかりました、ありがとうございます」メイルが祐一郎に返事をする。 「ライカ君、バレル大佐。聞いての通りだ。援護してもらえるか?」 「了解しました、光博士」 「こちらも了解した」 ライカとバレルがサーチマンとカーネルに指示を出して攻撃し、敵を少し下がらせる。こうして敵との間に何もない空間を作りだす。 「名人、転送を!」 名人が指示に従って車とバイクを転送し、先程出来た空間に出現させる。 「デカオ君はガッツマン向けに車を。メイルちゃんと透くんはロールとアイスマン向けにバイクを使うんだ」 「でも、どうやって車を使えばいいんだ?俺、車の運転なんて出来ないぞ?」 「車に乗るんじゃない、ガッツマンと車を合体させればいい」 「ガッツマンと車を合体ぃ〜?そんなこと、出来るのか?」 「大丈夫。出来る。この合体は一般のウェポンチップと同じ扱いだ。だからナビを問わずに出来るんだ。『スペシャルウェポン、ビークルアーマー』と叫べば、合体できる」 「わかったぜ。ガッツマン、行けえぇ。スペシャルウェポン、ビークルアーマー!」 車が各種パーツに分かれ、ガッツマンを覆う。合体後の姿はガッツマンの大きさと重量を活かした防御力を十二分に感じさせるものである。 「メイルちゃん、透君。バイクの方は、ノートンファイターの持つ対ウイルス用ワクチンから作ったバリアを周囲に発生させるようになっている。だから、ロールとアイスマンにうまく指示を出して、ウイルスを周囲のバリアに触れさせれば敵を倒せる」 「ありがとうございます!」メイルと透がハモって祐一郎に返事をした。 「ロール!」 「アイスマン!」 ロールが運転し、アイスマンが後ろに乗る。アイスマンが氷で敵をバイクの周囲に来るよう誘導し、蹴散らすということである。 「サーチマン、カーネル。代わるでガス」 「行くわよ、アイスマン」 前衛にいたカーネルと入れ替わるガッツマン。 そしてサーチマンは後衛に下がって、バイクに乗ったロールとアイスマンを援護する。 援護が一息ついた時、ライカがサーチマンに状況を確認する。 「サーチマン、ロックマンとノートンファイターの様子を把握できるか?」 「数は多い、ん?何か変です!」 「どうした?サーチマン!」 「ウイルスが数体単位が合体しているものがあります。そいつらと合体していないウイルスとの攻撃がロックマン達をてこずらせています」 「わかった。そこはガッツマン達に任せて、お前はロックマン達を援護しろ」 「了解しました」 「バレル大佐、どう思いますか?」 「・・・もしかすると・・・」 何かを言おうとしたが、やめたというバレルの様子にライカは何を言おうとしたのか何となく察しがついた。 ガッツマンとロール達はようやく、ウイルス達を大きく下がらせることに成功した。 「もう大丈夫だな、カーネル。ロックマン達を援護しろ」 カーネルがロックマン達の元に到着した時・・・ 数十体単位で合体したウイルスがいくつも存在していた。しかも、合体ウイルスは自分自身をゆっくりではあるが、増殖させている。 「これではいつまで経っても・・・」カーネルが半ば苛立ちながら吐き捨てる。 しばらく膠着状態が続いた。増殖のため、ウイルスが次々に現れるので、そうならざるを得なかった。 しかし、この状況を打破できるチャンスがやって来る。遅れてガッツマンとロール、アイスマンが来たのだ。 「ガッツマン、その姿は!?それにロールとアイスマンもバイクに!?」 「ノートンファイターの車をスペシャルウェポンで装備したでガス」 「こっちのバイクも使えるようにしてくれたの」 「ロックマン、こいつらは全員まとめて倒さないとダメだ。一体でも残れば、増殖する。そうなれば」 「となると・・・みんなが今使える武器では無理があるな。どうすれば・・・」 「ガッツマン。それにロールとアイスマン。車とバイクをロックマンに!」 ロールとアイスマンはバイクから降り、ガッツマンはスペシャルウェポンを解除した。 「熱斗、ノートンファイターの車とバイクを使え!ロックマン専用ウェポンがある!」 「ロックマン専用ウェポン?」 一体何だろう?と明らかに不思議がる熱斗だが、祐一郎の指示が続く。 「バイクに乗って、車へ突っ込め!」 「ロックマン、パパの言うとおりにするぞ!運転は任せた!」 「熱斗君、行くよ!」 バイクに乗って、車へ突っ込む熱斗とロックマン。バイクの接近に合わせて、車の屋根部分が上に開きバイクを収容するハッチと化す。 「車の開いている部分からバイクごと車に入れ!」 大きくバイクがジャンプし、車に入った。着地の衝撃を吸収する機構が作動した後、乗り手も含めてバイクが完全に固定される。 「熱斗、『スペシャルウェポン、ノートンアーマー』と叫べ!」 「スペシャルウェポン、ノートンアーマー!」 ガッツマンの時とは違い、明らかにプロセスが違う。こちらは合体というより変型である。 「これが、ノートンアーマー・・・」 「すごいや、熱斗君。これなら敵をまとめて倒せるよ。360(スリーシックスティー)バーストっていう必殺技もある。360度全方向に、ワクチンニードルを打ち出せるんだって」 「360度全方向か。だったら空中でやったら、効率よく行けそうだな」 「そうだね、みんなに協力してもらおう」 「みんな、頼みがある。ノートンアーマーの必殺技があるんだけど、空中でやった方が効率よくまとめて倒せるんだ。だから敵を空中に集めて欲しいんだ」 熱斗とロックマンの頼みを受けて、ノートンファイター、他のオペレーターやナビが空中にウイルスを集める。 集められたウイルスの中心に突っ込むノートンアーマー。 「ロックマン!」 「熱斗君!」 「360(スリーシックスティー)バースト!」 バイクの発生させるバリアでパワーアップされたワクチンがニードル状に360度全方向へ射出される。 次々にウイルスが消えていく。だが、運の悪いことに一体だけ残ってしまう。様子を地上から見ていたサーチマンが即座に対応したが、増殖の方が早い。 「増殖を阻止できなかった!申し訳ありません」サーチマンがライカへ謝る。 「それより、このチャンスをものに出来なかったのがマズい」サーチマンへ、というより周りに知らせるかのように呟く。 ノートンアーマーが再度攻撃しようとするも、ウイルスはこの場から撤退した。 「くそ、逃げられた」悔しがる熱斗。 「今回の戦いからすると、次が最終決戦だろうな。何となくそんな気がする」 「その通りだろう。次で今回の件に関して決着を付けよう」 「バレル大佐・・・」 トライアングルフュージョン用のチップを携えての初戦は、ウイルスに逃げられるといういう結果に終わったのであった。 結 トライアングルフュージョン あれから少し時間が経った。嵐の前の静けさの如く、あのウイルスに関する話が減っていた。 科学省で、何か分かったことはないか熱斗達7人が集まっている。 「多分、増殖したり力を蓄えている。そんなところだろう」 炎山の言葉は危機感が滲んでいた。 「みんな、今度は一気にトライアングルフュージョンで行く。だから力を貸して欲しい」熱斗の言葉に皆同意する。 「バレル大佐、1つお聞きしてもよろしいですか?」ライカがバレルに質問する。 「何だ?」 「はい、以前ノートンファイターを科学省に連れてきた時、大佐は『光博士にカーネルのことを確認していた為、カーネルを向かわせられなかった』と仰っていました。一体何を確認されていたのでしょうか?」 「カーネルが現存する最古のネットナビと言えるのは皆も知っての通りだ。ならば、ロックマンとソウルユニゾンが出来てもおかしくないのではと思ってな。それを確認していた。結論としてはできないのが当たり前ということだった。人間には、心臓や脳、筋肉など人間に皆共通する部分はある。しかし、人間としては一人一人違うだろう?そういうことだ」 「バレル大佐から、ロックマンのような力をカーネルが持つことはあり得るのか?という質問を受けてね。僕自身カーネルに興味もあったんで、調べさせてもらったんだ」 「光博士!」ライカは驚いたものの部屋に入ってきた祐一郎に敬礼し、元に戻った。 「さて、バレル大佐、ライカ、炎山君。3人の追っていたウイルスの情報をさらに分析してみた。あのウイルス自体は相当昔に存在していたが、今はほぼ絶滅したものだ。そして、突然変異のような形、というか異世界(ビヨンダート)における進化でああなったようだ。最初に調べた時は、正しく本質をつかめていなかった。すまない。で、ワイリーが作り出したのでは?という点に関しては、『今のあのウイルスに関しては』そうではないと言える」 「今のあのウイルスに関して?どうしてそうなるの?」 「つまり大元のウイルスを作ったのがワイリーかもしれない。そういうことですよね?」熱斗の疑問に炎山が答える。 「その通り。でもそれは、今我々に必要なことじゃない。今我々がやらなくてはいけないこと。それは、あのウイルスを倒してこの事件を解決する事。そういうことだ」 祐一郎の言葉に誰もが頷いた。 そこへネット警察の長官から連絡が来た。ビヨンダートの時と同じ様な時空間の裂け目が出来、あのウイルスが現れ続けているというのだ。 「ビヨンダートとの境目の時空間、もしくはビヨンダートで復活していたということか」「でしょうね、こういう状況を考えると」バレルの呟きに炎山が反応する。 「みんな、行くぞ!」熱斗を先頭に出かけていくのであった。 すぐにクロスフュージョン用のエネルギーフィールド形成の準備を行い、いつでも発射可能に体勢を整える科学省。祐一郎が熱斗へ連絡する。 「熱斗、裂け目を見つけたらすぐにトライアングルフュージョンしろ。フィールド形成すると同時に、ノートンファイターを転送する。この間ソウルユニゾンしたからな。シンクロ率は問題ないはずだ。頼むぞ!」 「分かったよ、パパ!」 数分後、裂け目を視認できる場所までやって来たが、まだ裂け目を目の前にしたわけではない。熱斗達の前にいくつものウイルスが立ちはだかる。炎山達が中央突破で道を作り、強引に進んでいく。熱斗とロックマンに無駄な体力を使わせない作戦を無言で実行している。ようやく裂け目の目の前まで来る事が出来た。 それにあわせて、クロスフュージョン用のフィールド形成・ノートンファイターの転送が行われる。3つのシンクロチップを取り出し、気合いを入れる熱斗。 「シンクロチップ、トリプルスロットイン!プログラムアドバンス!」 「トライアングルフュージョン!!」 トライアングルフュージョンを行い始めた熱斗とロックマン。相変わらず、ウイルスが現れている。 熱斗以外のオペレーター達も各自のナビを実体化させる。 「アイスマン、氷のドームを作って熱斗君達を守るんだ!」透の指示が飛ぶ。 「こっちも行くぞ、ガッツマン。スペシャルウェポン、ビークルアーマー!」 氷のドームを作ったアイスマンが、ロールが運転するバイクに乗る。 エンジンをふかし、ウイリーで突っ走るロール。ブルースとカーネルが倒したウイルスの残骸を利用して空中へ飛ぶ。そこからアイスマンが氷の息を吹きかけ広範囲のウイルスを瞬間的に足止めする。その一瞬を利用してウイルス達を消滅させる。 氷のドームを守るガッツマン。ビークルアーマーの力は大きいが、その重量故にスピードが鈍いのは致し方ない、と思うデカオ。 「デカオ君、ビークルアーマーの走行機能を使うんだ。車の時と同じ最大速度が出せる」「よっしゃ、ガッツマン。タイヤを回転させろ!」 「承知でガス!」 ガッツマンの右足甲の外側、左足甲の外側についているタイヤが回転し始めると、ガッツマンのスピードが上がる。 「ふぇ〜、ガッツマンがあんなに早く・・・」 スピードが上がったのはいいことではあるが、倒し損ねるウイルスが出てしまう始末。 そこをフォローするのは、サーチマンである。 「ガッツマン、フォローする。思い切り行け」 「感謝でガス!」 ブルースとカーネルのタッグは裂け目を目指していた。ウイルスを倒すだけではこの事件が終わらないのは明白。それにロックマン達のトライアングルフュージョンが完成する前に全て終えることが出来るなら、それが一番良い。 ブルースとカーネルが裂け目に近づくと、数体合体したウイルスや数十体合体したウイルスが現れるようになった。 「裂け目には近づかせないってことか。なら!」 「打ち破るのみ!」 気合いを入れて、ウイルス達と戦うブルースとカーネル。合体ウイルスでも数体程度の合体ものなら互角なのだが、数十体の合体ものとなると、分が悪い。 「ブルース!カーネル!」バイクに乗ったロールとアイスマンが駆けつける。 ブルースとカーネルがそれぞれ、合体ウイルスに傷を付ける。その後はバイクの出番である。傷口にワクチンを触れさせてウイルス消滅させるのである。 2体のナビと1機のバイクにより、合体ウイルスの相手ももう終わるだろうと思われる頃。 「熱斗君!」ロックマンが心配して声を掛ける。 トライアングルフュージョンで、一番苦しんでいるのは熱斗であった。当然ロックマンとのクロスフュージョンは問題ない。また、ロックマンとノートンファイターのクロスフュージョンもさほど問題ではなかった。つまり、熱斗とノートンファイターのクロスフュージョンが問題なのである。 「くっそ。ロックマンだけじゃなくて、ノートンファイターとのクロスフュージョンがこんなにキツいなんて!」 「熱斗。私はお前の祖父、光正博士によって生み出された。いわば、お前の祖父の形見ともいえる。そしてロックマンはお前の父、光祐一郎博士が生み出した。私とロックマンとお前。光家3代の力を、魂をクロスさせるのだ」 熱斗でもなく、ロックマンでもない。この声の主はノートンファイターしかあり得ない。 「おじいちゃんと、パパと、俺の力と魂をクロスさせる・・・」 そう呟いた熱斗は余計な気負いが消え、リラックス状態で自然体となる。 ようやく熱斗とノートンファイターのクロスフュージョンが完成した。 すなわちそれは、トライアングルフュージョンの成功を意味する。 氷のドームの外ではガッツマンとサーチマンが守っている。 ブルースとカーネル達が相手にしていた合体ウイルスが今度は氷のドームへ向かっていく。 「マズい!」ブルースが焦る。 「させるか!」カーネルが阻止しようとするも、かわされてしまう。 ロールとアイスマンのバイクも全速力で、氷のドームへ向かう。 「ガッツマン、サーチマン!そっちに合体ウイルスが行ったわ!気をつけて!」 ロールの声を受けて注意を払うガッツマンとサーチマン。 合体ウイルスが数体現れた。数十体の合体ものが3体、残りは数体程度の合体ウイルスだ。 ガッツマンが3体のうちの1体をどうにか倒す。大きい合体ウイルスは後2体。そして、残りの合体ウイルスの2体をサーチマンのライフルが仕留める。 そこへブルースとカーネル、バイクに乗ったロールとアイスマンが駆けつけてきた。 「デカブツが後2体。ビークルアーマーのガッツマンでさえ、あのボロボロ具合か」 ブルースの呟きに、カーネルが檄を飛ばす。 「まずは、あいつらを叩く。余計なことを考えるな!ガッツマンは無事なのだから」 サーチマンとロールとアイスマンは小さい合体ウイルスを相手にしている。 しばらくすると。大きい合体ウイルスはが後1体、小さい合体ウイルスが後2体となったが、ブルースやロール達は相当疲労していた。 残りは計3体。もっと強くなろうということなのか、大きい合体ウイルスに小さい合体ウイルスがさらに合体し、今までで一番大きな合体ウイルスが誕生した。 「ここへ来て、合体するとは」ブルースが冷静さを保ちながらも、面倒なことになったという口調で呟く。 合体したことは確かに効果があったようで、ビークルーアーマーのガッツマンまで含めて全員まるごと薙ぎ払われた。そして、氷のドームへ攻撃を加える。 「ロックマン!」全員が口々にロックマンの名を呼ぶ。 氷のドームは破壊され、氷塊が山を成す。 「大丈夫!」「待たせたな、みんな!」 最初はロックマン、続いて熱斗の声で返事が返ってくる。 「成功したんだ!」透が声を上げる。 「熱斗、良かった!」 「行くぞ!ロックマン、ノートンファイター!まずは、あいつを倒す!」 「うん、熱斗君」 「ロックバスター!」 ロックバスターがウイルスに命中し、しっかりとした傷を与える。さらに体術を駆使して素手での攻撃もダメージになっていることを確認する。 「すごいな、これがノートンファイターのワクチンの力か」 熱斗は攻撃力に納得し呟く。そして、攻撃を続けウイルスをダウンさせると、ロックバスターを溜めに入った。 ちょうどその時、薙ぎ払われたナビ達が全員起き上がってくる。 「チャージショット!」 ロックバスターの数倍の威力を誇るチャージショットでも1撃では倒しきれない。だが、充分な傷とダメージは与えている。 「ロックマン、裂け目に行って!今の状態のウイルスなら私達で何とかできるから!」 ロールの言葉にロックマンは頷いて、裂け目へ突入した。 ロックマンがウイルスの親玉的存在と戦闘開始を迎える時、ロールやブルース達は合体ウイルスにようやく勝利したのである。 裂け目に入って、ロックマンは探し続けた。当然ながらウイルスの親玉的存在を、である。 残してきた仲間達が合体ウイルスを倒すくらいの時間が経った時、やっと見つける事が出来た。 「あいつが、今回の事件の・・・」 合体ウイルスでもウイルス自身が大きくなるだけで、パワーと重量が増えることが基本だった。が、この親玉は違う。パワーと重量のみならず、攻撃手段や姿もまるで違う。 だが、ノートンファイターの持っていたデータから照らし合わせると、間違いなくあのウイルスと同じである。そして、根源のウイルスであることもだ。 「行くぜ!あいつを倒さなきゃ!」 まずは、ロックバスターを連射して相手を探る。すると、ロックバスターが跳ね返される様子が確認できた。 「熱斗君、ロックバスターが」 「分かってる、あの釣り針のついた蜘蛛の糸みたいなヤツを振り回して防御してる。アレを何とかする必要があるな」 「ソードで切りに行く?」 「アレが1個だけじゃない可能性がある。ロックバスターでそれを確認してみよう」 複数の角度からロックバスターを放ち、防御されるかを試す。 全て防御された時に、複数の釣り針付き糸を確認できた。それだけでなく、さらに反撃が来たが避ける。その反撃は囮の攻撃で、本命は体当たりであった。 「体当たりしてきても、ダメージも受けないなんて」 「流石に親玉ってところか」 ロックマンの呟きに、熱斗が納得したという返事をする。 体当たりした親玉は、そのまま裂け目へと向かっている。ロックマンも追いかけて元の空間に辿り着く。 「ロックマン!」ロールの声で、皆ロックマンに注目する。 「あいつが親玉だ!みんな気をつけてくれ!」 ロックマンが縦横無尽に動き回り親玉の注意を引きつけて、他へ攻撃がいかないように牽制する。 流石に親玉だけあり、ロックバスターではかすり傷程度、チャージショットでも少し傷を負わせる程度にしかならない。その傷を他のナビが攻撃して傷を広げていくが、倒すには相当時間がかかるのは目に見えている。ただ、複数で攻撃しているので、釣り針付きの糸の数が減り、防御力はかなり弱まってきているのは確かである。 「このままだと皆の体力が尽きちゃうよ!」ロックマンがどうすればいいのかと言わんばかりに発する。 熱斗も同様の考えであり、打開策があるか探して周りを見渡している。そこで1つの案を思いついた。 その案を伝えるべく、仲間達と集まる必要がある。そこで、攻撃をウイルスと地面に行う。地面から上がる煙に紛れて仲間達と共にウイルスから充分な距離を取った。早速案を伝える熱斗。 「という作戦を思いついたんだけど、協力してくれるか?」 「しかし、それは無茶というより、無謀に近いかもしれん」カーネルが冷静にツッコむ。そこへ親玉が攻撃してくる。伝えることは伝えた。しかもこの状況になった以上、熱斗の言った作戦に乗っかるしかない。 親玉の攻撃を避けながら、散開するロックマン達。ガッツマンとカーネル。アイスマンとブルース。サーチマンとロール。そしてロックマンとバイク。それぞれに分かれた。 まずは、ブルースとカーネルが親玉の注意を引きつける。その間にガッツマンはスペシャルウェポンを解除して、車に戻す。アイスマンは氷のジャンプ台を作り、ガッツマンがそれを支える。 サーチマンはサーチショットを放つ為の固定準備に入る。そしてロールはサーチショットを放つ前の囮としてのロールアローを援護射撃中だ。 ロックマンはバイクに乗り、車にバイクごと突入した。すぐにノートンアーマーに成らず、氷のジャンプ台へ猛スピードで突っ込んでいく。 「ブルース、カーネル!下がって!サーチマン、サーチショットを!」 ロックマンの指示に従うブルースとカーネル、サーチマン。 サーチショットが放たれ、親玉の口付近に命中。親玉の口が大きく開かれた。そこへ、猛スピードでジャンプ台からジャンプした車が親玉の中へ突入する。親玉の中で中心というべき場所に辿り着いた車。 「スペシャルウェポン、ノートンアーマー!360(スリーシックスティー)バースト!」 ノートンアーマーに変型した直後必殺技を放つ。つまり内側から攻撃を加えるという作戦だったのだ。 「外からだとたいした傷やダメージにならなかったけど、こっちは結構効いてるね。熱斗君」 「だな!ノートンアーマーのエネルギーを上げるぞ!」 エネルギーのアップした必殺技が放たれ続ける。すると複数の穴が開いて、外から光が入ってきた。 「よし、脱出だ!」 手近な穴から親玉の外へ出たノートンアーマー。最後の一撃を準備する。 「ワクチン、チャージ!」 右腕を親玉に向けて、チャージショットの体勢に入るロックマン。その様子を見て、とっさの判断でナビ達がロックマンのチャージ状態を守ろうとする。アイスマンの防御壁をガッツマンのパワーで支える。突破されると、今度はロールとサーチマンのホーミング系ショットが親玉の攻撃に反撃する。ホーミング系ショット同士で、同士討ちさせてさらに突破される。最後はブルースとカーネルが、格闘戦で時間を稼ぐ。 ついに、ワクチンのチャージが完了した。 「ワクチンチャージショット!」 ロックマンのチャージショットにワクチンをチャージして攻撃力を高めるということをしたからなのか、ノートンアーマーは大破してロックマンが落下する。落下しながら、親玉の最後を見届けるロックマン。仲間達も親玉が倒れたことを見届ける。 「終わった・・・」 「終わったね、熱斗君」 「熱斗、よくやった。お前は立派なオペレーターだ」 ノートンファイターの声は光 正(ひかり ただし)の声にそっくりだったことだけ、熱斗は覚えている。 クロスフュージョン用のフィールドが解除されると、熱斗は体力の消耗が大きかった為に、その場に倒れ込んでしまったのだった。 数日後、熱斗の回復と共にライカとバレル大佐が日本を去った。再会をを約束して。 了 ノートンファイター、眠りにつく あれから数ヶ月の時が過ぎた・・・ ノートンファイターは再び、特別プログラム保管庫で眠りについた。もともと光 正(ひかり ただし)の意向からすれば、ノートンファイターが動き回るようなことは望まれていなかったからだ。 時空間の裂け目を閉じた後、IPCやネット警察のナビ達と共にノートンファイターが念のため出動していた。しかし、あの件以降、あのウイルスが現れることは全くなかった。結果、ノートンファイターを眠りにつかせる判断が下されたということである。 「まさか、おじいちゃんの作ったノートンファイター一緒に、トライアングルフュージョンするとは思わなかったぜ」 「ナビとナビのクロスフュージョンも世界初だったしね」 トライアングルフュージョンの際に行われた「ナビとナビのクロスフュージョン」は、科学省の正式プロジェクトとなり、実用化・商用化を目指して研究が進められている。もちろん先導は光祐一郎であり、プロジェクトメンバーには名人もいる。 「光家、3代の力と魂をクロス、か。俺、将来はおじいちゃんやパパみたいになれるかな?」 「それは、これからの熱斗君次第だよ。熱斗君、今日の宿題ちゃんとやろうね」 ロックマンのお小言を華麗にスルーして、今日はどんな風に遊ぼうかと考えている熱斗であった。 参考資料 ロックマンエグゼwiki ノートンファイターwiki ロックマンエグゼまとめ@ウィキ−光正 |
2012/02/14
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (10:59 pm)
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Fani通2011(上)に収録されている スイートプリキュア番外編の元ネタ一覧。 と言っても3つしかないが。 フツァブデグ:FCABDEGのエスペラント読み。 綴りがFCABDEGなのは、 説明の必要もないほど簡単なことなので略。 本当はソルレソル読みするのが一番いいのだが、 ソルレソルでの「FCABDEG」の読み方を知らないので、 エスペラント読みにした。 6代目・7代目:音階が以前は6音、現在は7音に引っ掛けて。 6年半前:6と7の間の真ん中と言える「6.5」に年をつけたもの。 |
2011/05/03
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (3:56 pm)
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けールガン絡みで、F会メンバーがJASRACへ申請した時の出来事記録本。 詳細は下記リンクを。 COMITIA96の参加について http://d.hatena.ne.jp/f-kai/20110501/1304367696 |
2011/05/03
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (3:56 pm)
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先月29日。akiba F。 献血の後に用があったので、予約時間よりも早く行って、さっさと問診票の記入等に入った。 久々のakiba Fなので、ロッカーの鍵の掛け方をすっかり忘れていた。 掛け方の案内を見てやる始末(^^; ここでも、テレビはVHF+関東UHF3局(テレ玉、TVK、千葉テレビ)限定っぽい。 ということは献血ルーム全体でそうなったのかも。 特にイベントらしいことはしてなかったようなので、ipodに入っていた動画も好みのものはなかった。ということで、少し寝た。 献血後に、コミュニケーションノートやアニメージュ、ニュータイプを見てから撤収。 用を済ませて帰宅という1日だった。 |
2011/05/03
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (3:54 pm)
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先月3日。いつもの献血ルーム。 予約献血だったが、行ってみたら依頼献血の扱いになった。 「白血球の型が合う」とか言ってたので、HLA関係の採血の様子。 珍しく、血漿+血小板という変則だったな、確か。 それ以外採血関係で特に変わったことはなし。 4/1から用紙や献血可能条件に変化があったようだ。 ・問診票の記入項目が増えた用紙になった ・男限定で献血可能の条件引き上げがあった ・400ml献血可能年齢が、17歳に引き下げ(変更前は18歳) 大雑把にしか把握しなかったので、細かい内容までは覚えていない。 |
2011/05/03
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (3:52 pm)
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3/20、つまり震災後10日くらい後にやった。 いつもの献血ルームだったが、来てる人はいつもより少なかったかも。 状況を考えれば、当然といえば当然か。 採血ベッド上で見られるテレビが、ケーブルではなくなっていた。 VHF+関東UHF3局(テレ玉、TVK、千葉テレビ)限定っぽい。 まぁ、寝たり採血室全体の様子を見る時間が出来たと思えばいいか。 あ、そういえば・・・ ご当地けんけつちゃんの勢ぞろいしているクリアファイル等もらって来た。 |
2011/05/03
カテゴリ: きまぐれ雑記帳 :
執筆者: gf-tlvkanri (3:52 pm)
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用があったので、平日(1/28)に休みを取って用のついでに。 アキバ献血ルームで、特に変わったことはなかった気がする。 予約していた朧小町も引き取り。 やってみた感じとしては、サスペンスとかシリアス部分がもっと濃い方が好みだな。 というか、そういう方向が主の学園を舞台にした作品だと思っていたのだが、違っていた。 ・朧の力が五感を入り口として作用する ・その五感それぞれの朧の力を5人のヒロインが受け継いでいる #ちはや=触覚 ちとせ=視覚 紫子=聴覚 美那=嗅覚 沙絵=味覚 という点は良かった。 ちとせは視覚の朧の力を受け継いでいた為に、夢を通じてであるにしても、ちはやの様子を見て・見えていたのは幸せだったのか・・・?ちとせENDを見る限りでは、満たされた想いではあったようだが・・・ それにしても、残念クオリティのグラフィックがあったのはいただけない。 デビュー作としては、及第点といったところだと思う。 |